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» 2015年04月06日 10時00分 UPDATE

CAEイベントリポート:CAEに必須な座学習得から実験まで――設計者の学校「CAEユニバーシティ」 (1/2)

サイバネットシステムの「CAEユニバーシティ」は、設計開発エンジニアがCAEツールを最大限活用できるよう、特定のCAEツールに依存しない多彩な講座で、体系的に学ぶことができる総合CAE教育プログラムだ。本記事では講座の様子と、サイバネットシステムがCAEユニバーシティで目指していることは何かを関係者のインタビューを交えて紹介する。

[佐々木千之,MONOist]

 「CAEユニバーシティ」は、CAE関連事業を幅広く行っているサイバネットシステム(サイバネット)が2007年にスタートしたCAE/設計エンジニア向けの教育プログラムだ。サイバネットはCAEソリューションプロバイダーであり多数のCAEツールの販売代理店でもあるが、CAEユニバーシティは特定のCAEツールの使い方を教えたり、特定ツールへの導入を促すような性格のものではない。

 CAEユニバーシティは、設計開発現場のエンジニアがCAEツールを最大限活用できるよう、理論に関する座学や実習/実験など基礎知識から応用までを多彩な講座で体系的に学ぶことができる構成になっている。講座の形態には、会場(場所は主に東京だが、講座によっては名古屋、大阪でも開催)で定期的に開催している「定期講座」、PCがあれば好きなとき好きな場所で学べるeラーニング講座「e-CAEユニバーシティ」、企業内で要望に応じた内容で開催する「オンサイト講座」の3つがある。それぞれ講師は大学で研究に従事している先生や、企業で活躍しているベテランエンジニアなどが担当している。

 数ある講座で最も充実しているのはFEM(有限要素法)/CFD(数値流体力学)で、これに加えて制御、信号、機械設計、光学の計5分野あり、さらに分野ごとに細かく分かれて27講座ある(2015年3月時点)。長期に時間を確保することが難しい現場エンジニアのために、1つの講座は1日ないし2日にまとめられており、短期に学びたい内容だけを受講できる配慮がなされている。

 受講者数は延べ1463人(定期講座のみ、2014年3月末時点)に達する。業界別割合では、電気機器が最も多く29%、次いで精密機器と自動車関連が共に17%ずつを占めている。業務経験年数では、0〜2年が28%、3〜5年が30%で、経験5年以内だけで6割近いが、10年以上のベテランも30%を占める。CAEユニバーシティを利用しているエンジニアの中には、「自分のスキルや知識を保ちたい」という理由で、同じ講座を何度も定期的に受講する人もいるそうだ。

手を動かし、実験の原理とポイントを学ぶ“実験室”

 それではここで2015年3月18日に東京(秋葉原)で開催された、「流体力学実験室」の様子を少し紹介しよう。“実験室”は、実験装置と測定機器を使用して実験を行い、得られた結果を解析結果(時間の都合上、解析ツールを使った解析は行わない)と比較し、考察するという内容。流体力学実験室に先立ってFEM実験室(静解析編、振動解析編)が開講されていて、実際に手を動かすということもあってか、講座の中でも人気が高いそうだ。

 流体力学実験室は、講師の横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授の白崎実氏(博士(工学))が、座学中心の「流体力学基礎講座」、「CFD原理講座」を担当してきて、受講者からの「流体力学の実験を実際に体験してみたい」という声をきっかけに生まれたものだ。簡単な流体力学の現象を題材に、どこでも実施できるよう特別な実験機器を使わず、これから流体力学を始める初心者でも原理や仕組みが分かりやすく、かつ理論解や既知のデータとの比較によって流体現象や背景にある理論の理解が深められるということを目指したという。この日は14人のエンジニアが参加し、10時から昼食をはさんで17時まで、1時間ほどの説明を受けた後、3つのグループに分かれて実験を行った。

 今回の実験は、サーキュレーターで作った風の流れの中に、大きさや形の異なる物体を置き、電子天秤と熱線風速計を使って計測した数値から、流れ方向の力の成分「抗力」および「抗力係数」(無次元化した抗力)などを求めるというもの。

yk_caeunv_cae1.jpg 実験1の概要(流体力学実験室で配布されたテキストから抜粋)

 実験は3段階に分かれており、ざっくり言えば、まず予備実験的な位置付けの「実験1」で実験のポイントを学ぶ。次に「実験2」では実験1でなかなかうまく結果が出ない理由を踏まえ、改良した実験装置で少し丁寧に実験をして、グループ内や全体での結果確認と検討を行う。そして「実験3」では実験の条件をさまざまに変えて仮説を検証し、「ゴルフボールは表面にディンプル(へこみ)があることによってよく飛ぶ」という現象を、手元の実験装置で特殊な状況をわざと作りだすことで間接的に計測し、確認と検討を行う、というものだった。

yk_caeunv_sirazaki.jpg 流体力学実験室の講師は横浜国立大学の白崎実准教授(博士(工学))。他に「流体力学基礎講座」「CFD原理講座」も担当する。講座の内容は、受講者がさまざまなバックグラウンドを持つこともあって、大学生向けに教えているものの流用ではなく、いろいろ工夫してカスタマイズしているとのこと。
yk_caeunv_jikkensitu01.jpgyk_caeunv_jikkensitu02.jpg 受講者は1人だけ女性で13人は男性。比較的若い人が多いようだが、ベテランと思われる人も混じっていた。受講者はお互い初めて会う人たちだが、そこはエンジニア同士、実験の役割分担や計測などはスムーズに行っていた。
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