インタビュー
» 2015年04月15日 10時00分 UPDATE

BMW 開発担当取締役 インタビュー:たたき上げの開発担当取締役が目指す“BMWらしさ”とは (1/3)

2014年末にCEOと開発担当取締役の交代をほぼ同時期に発表したBMW。新任の開発担当取締役に就任したのは、トレーニー(研修生)からたたき上げのクラウス・フルーリッヒ氏だ。同氏が目指す“BMWらしさ”や、製品開発のモジュール化、トヨタ自動車との協業などについて、自動車ジャーナリストの川端由美氏が聞いた。

[川端由美,MONOist]

CEOと開発担当取締役が同時期に交代

 2014年の暮れも押し迫った12月、BMWから衝撃的な人事が発表された。2006年からCEOを務めてきたアルベルト・ライトホーファー氏が退任し、2015年5月からハラルド・クルーガー氏に交代するというものだ。ほぼ時を同じくして、同社の研究開発部門を率いる開発担当取締役のヘルベルト・ディース氏がVolkswagen(フォルクスワーゲン)乗用車ブランドのCEOに就任するとのニュースが流れた。

 自動車メーカーでは、CEOと並んで技術担当の取締役や役員はその企業の顔になっている。このため、今回のBMWの人事はメディアにとって格好の報道材料になったわけだ。



 ハラルド・クルーガー氏だけでなく、ヘルベルト・ディース氏に代わってBMWの開発担当取締役に新たに就任することとなったクラウス・フルーリッヒ氏も、にわかに注目を浴びることになった。

 フルーリッヒ氏が、ドイツ車メーカーの役員としては珍しく、肩書きとして名前の最初に付くのが「Dr.」ではなく「Mr.」であることにも注目だ。1960年にドイツ北部の町で生まれ、アーヘン工科大学で機械工学の学士を取得。1987年にBMWへ入社して以来、トレーニー(研修生)からのたたき上げである。V型8気筒エンジンの開発のはじまり、BMWグループ全体の商品企画や戦略担当を経て、今日に至っている。

 この数年で、MINI(ミニ)やRolls-Royce(ロールスロイス)ブランドまで含めたBMWグループ全体では、年間で200万台を越えるまで販売台数を伸ばしている。製品ラインアップも、「3シリーズ」や「5シリーズ」、「7シリーズ」のようにサイズの異なるセダンを作っていた時代から、「Xシリーズ」のようなクロスオーバーSUVや、先日発表された「2シリーズ・グランツアラー」のような7人乗りのFF車まで広げてきた。そんな中、限られる資金や人材をどのように投入していくのだろうか。

クラウス・フルーリッヒ氏 クラウス・フルーリッヒ(Klaus Fröhlich)氏。1960年ドイツ・ゾーセット生まれ。アーヘン工科大学を卒業後、1987年にBMWに入社。V型8気筒エンジンの開発、英国におけるランドローバーの開発担当、次世代内燃機関技術、直噴エンジンなどの開発を経て、BMWブランドの商品企画や戦略担当を務め、2014年12月9日より現職(開発担当取締役:Member of the Board of Management of BMW AG with resposibility for Development)

「私はもともとがプロダクトエンジニアですから、顧客層が広がり、顧客の希望が幅広くなったからといって、それに対応すべく、技術を複雑にして良いとは思っていません。一見すると、たくさんの車種があるのですが、その表皮の下にある技術は複雑ではなく、シンプルな構成になっています。例えば、2シリーズ・グランツアラーは、ラグジュアリーな中にも広々とした室内空間を求める顧客向けで、伝統的なBMWの顧客層とは異なります。プラットフォームに関しては、ミニから2シリーズ・グランツアラーまで対応できるものと、2シリーズから次世代の7シリーズまで対応するものと、2種類のアーキテクチャに集約させています。エンジンについても、1気筒当たり500ccというベースを守りつつ、3〜6気筒まで同じアーキテクチャで設計しています。しかも、このエンジンのアーキテクチャはFF車でもFR車でも応用が可能です」(フルーリッヒ氏)

「2シリーズ・グランツアラー」「2シリーズ・グランツアラー」 「ジュネーブモーターショー2015」で公開した「2シリーズ・グランツアラー」(クリックで拡大) 出典:BMW

 プラットフォームとエンジンの基本構造を共通化し、応用の範囲を広げたことにより、商品のバリエーションが増えても、プラットフォームの設計やエンジンの適合などに対応する時間を最小限に抑えることができるというわけだ。もう少し具体的な例を挙げてもらうと……。

「『2シリーズ・クーペ』はスポーティで走らせて楽しく、『3シリーズGT』は快適で利便性が高いといったように、基本となる構造は同じでも、運転する人にとって異なる印象やフィーリングを与えるクルマを提供できます。10〜15年前のBMWの顧客は、かなり特殊なプロファイルを持っていましたが、今では幅広い層に広がっています。それもあって、イノベーションを重視することでBMWらしさを保つと同時に、内外装の質感といった一般の顧客が目を止める部分の質感を高めることにも注力してきました。ただし、顧客層の広がりに応えて製品ラインアップを広げる一方で、高性能スポーツモデル『BMW M』に代表されるスポーティなイメージや、イノベーションという部分は一切の妥協をせずに“BMWらしさ”を保っていきます」(フルーリッヒ氏)

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