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» 2015年05月14日 09時00分 UPDATE

産業用ロボット:「ロボット新戦略」が生産現場にもたらす革新とは? (1/4)

日本再興戦略の一環として策定された「ロボット新戦略」は、2015年5月15日に新設される「ロボット革命イニシアティブ協議会」により、実現に向けた活動に入ることになる。本稿ではロボット新戦略が生産現場に何をもたらし、どういう方向性になるのかを解説する。

[小平紀生/日本ロボット工業会システムエンジニアリング部会長,MONOist]

 安倍内閣の「日本再興戦略」の一環として設置された「ロボット革命実現会議」最終回の2015年1月23日、「ロボット新戦略」が座長の三菱電機 相談役の野間口有氏から安倍総理大臣に手渡されました。このロボット新戦略は同日、経済産業省のWebサイトにも公開されました。

 同戦略は、2015年5月15日に新設される「ロボット革命イニシアティブ協議会」を推進母体とし、今後は実現に向けた活動に入ることになります。「ロボット新戦略」は社会の広範なロボットの価値について論じられていますが、本稿ではその中でも既に40年近く生産現場で利用されてきた「製造業用ロボット(産業用ロボット)」の新たな展開について解説します(関連記事:いまさら聞けない産業用ロボット入門)。

製造業ロボット産業の発展

 製造業用のロボット産業は好調を続けています。2014年の日本製多関節型ロボットは、前年度比29%増の12万台で過去最高出荷台数を記録しました(図1)。これは、海外の製造業自動化意欲に支えられたもので、輸出比率は従来よりもさらに拡大し、77%に達しています。ロボット産業の好調は喜ばしいものの、本来の製造業用ロボットの使用目的が製造業の競争力強化にあることを考えると、最近の輸出偏重傾向が国内製造業の心配な状況を反映しています。

photo 図1:日本の製造業用ロボット出荷台数推移(クリックで拡大)

製造業の国際競争力とロボット新戦略

 まずは日本の製造業の問題点を把握しましょう。バブル崩壊以降のおよそ20年間、製造業全体の年間出荷総額はおよそ300兆円前後で停滞および下降傾向にあります。問題は付加価値総額※1)と就業者数※2)が確実に減少し続けていることです(図2)。

※1)製造業の付加価値総額:経済産業省工業統計の値。各事業所で付加した金額、すなわち各事業所の生産額から原材料などの購入費用などを引いた金額を国内全ての事業所で合算したもの。日本国内全ての製造業の利益や人件費、設備投資はこの付加価値総額で賄われる

※2)製造業の就業者数:内閣府国民経済計算の値で、元データは総務省労働力調査の値。製造業企業の社員(有期契約を含む)・役員・臨時雇用者(日雇を含む)、自営業主とその家族従業者を含む総数

photo 図2:日本のGDPと製造業の推移(クリックで拡大)出典:内閣府国民経済計算

 たとえ出荷総額が伸びなくても、利益や雇用の根源である付加価値総額が増えていれば、問題ありません。しかし、残念ながら日本の“失われた20年”における製造業ではハイペースで減少が続いています。

 ここは危機感を共有すべきなので、もう少し我慢して現状数値分析にお付き合いいただきます。1992年から2013年の21年間で、製造業の付加価値総額は123兆円から88兆円に減少、すなわち製造業が価値を産み出す力がこの間で30%近く失われていることになります。従って雇用も維持できず、同じ期間で就業者数が1527万人から976万人に減少しました。すなわち551万人の雇用を失っています。製造業では現在、現場の人手不足が叫ばれていますが、人手が足りなくなっているというよりは、実際には養えなくなっているという方が現実でしょう。

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