トヨタとマツダの提携を生んだ「クルマづくりの志」と「ふるさとへの思い」自動車産業の将来への危機感も背景に(2/2 ページ)

» 2015年05月15日 06時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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人材育成と自動車産業の今後に対する危機感

 今回の発表で、提携の具体的な内容は発表されたかったが、提携によって成し遂げたい大きな目標は共通している。それは人材育成だ。

 業務提携の具体的な内容は、今後両者で組織する検討委員会で策定するが、その検討委員会でも互いの技術者の交流が図られる見込み。互いに切磋琢磨することで、個社では難しかった人材育成の効果が期待されている。さらに提携内容が決まれば、技術者の交流はさらに拡大し、より濃密なものとなる。互いに共通点があるとはいえ、別の企業である以上、異なる企業文化や商品、技術などから得られるものは多いだろう。豊田氏は、2014年度の決算発表でも人材育成を重視する姿勢を見せていた(関連記事:“大きな分岐点”に入ったトヨタに求められる「チャレンジする人材」)。

 そして人材育成は、「次の100年もクルマは楽しいと思ってもらえるようにする」(豊田氏)という言葉に代表されるように、今後の持続的な自動車産業の成長に直結している。アップルやグーグルなどの自動車業界への参入がささやかれる中(関連記事:アップルやグーグルは本当にクルマを作るのか)、自動車業界が今のままで生き残れるかどうかは未知数。この現状に対する危機感も、提携の呼び水になった可能性は高い。

トヨタが気になるマツダの技術、マツダが気になるトヨタの技術

 会見での両氏の言葉は、理念的、抽象的なものが多かった。それでも、記者との質疑応答などから、トヨタが気になるマツダの技術、マツダが気になるトヨタの技術が透けて見えてくる。

 豊田氏は会見後の囲み取材で、「トヨタ生産方式が(マツダ)を上回っている可能性がある一方で、『Toyota New Global Architecture(TNGA)』より『SKYACTIV技術』+『魂動デザイン』が1周先を行っている可能性もある」と話している。トヨタ生産方式で培ってきた生産技術に対する強い自信を持つ一方で、TNGAのような車両モジュール化技術の導入の遅れは気になっているようだ。中でも、マツダの「走る歓び」で大きな役割を果たしている内燃機関は、トヨタ自動車が大きく先行されている技術分野だ。

囲み取材に対応するトヨタ自動車の豊田氏(左)とマツダの小飼氏(右) 囲み取材に対応するトヨタ自動車の豊田氏(左)とマツダの小飼氏(右)(クリックで拡大)

 小飼氏の「トヨタ自動車が、地球環境保全とモノづくりの将来に責任を果たそうとする強い意志を尊敬する」という言葉からは、トヨタ自動車の燃料電池車やプラグインハイブリッド車、日本を代表するモノづくりの手法になったトヨタ生産方式に対する興味がうかがえる。マツダは、2019年度以降に投入する車両で電気駆動を強化する方針を示しており(関連記事:次期「SKYACTIV」は2016年度以降に採用へ、電動化技術で燃費をさらに15%向上)、トヨタ自動車が持つ電動システムに対する知見や燃料電池技術は有効に活用できるはずだ。

 マツダは2007年以降「モノ造り革新」への取り組みを続けており、成果も上がっている。しかし、トヨタ生産方式を活用すれば、「モノ造り革新」にさらなる“カイゼン”がもたらされる可能性は高い。

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