CNCフライスを動かすために使うものあれこれママさん設計者がやさしく教える「CNCフライス超入門」(2)(2/2 ページ)

» 2015年05月18日 09時00分 公開
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CNCドライブ基板

 CNCドライブ基板とは、「制御用PCと接続することで、全軸のモータの駆動を同時に制御するもの」です。これがなければCNCフライスは動いてくれません。

 もうちょっと突っ込んで説明しますと、CNCフライスの各軸にはステッピングモータが付いています。ステッピングモータとは、入力パルス(信号)の数に比例して回転角度を変化させ、その周波数で回転速度を制御できるモータです。こんな器用なステッピングモータですが、一人では自分が何をすればいいのか決められないので、指示を伝えるドライブ基板が必要になります。しかもCNCフライスの運転では3軸同時にお世話をしなければならないので、それに見合ったインタフェースを持つ専用の基板が必要なのです。

 さらに、このドライブ基板に作業命令を下すために「CNCソフト」が必要になります。このCNCソフトを制御用PCにインストールして使うことで、ようやく思いのままに操作できるというわけですね。そうとはいえ、「あれもこれも買い集めるのは面倒だし、なんだか不安」という初心者さんもいらっしゃると思います。そんな場合には、本体とCNCドライブ基板がセットになったお買い得品を選ぶか、ドライブ基板とソフトをひとまとめにした「コントローラー」を検討されてはいかがでしょうか。

 参考までに、以下はUSB接続できるコントローラーです。

 TRA100/150

 このコントローラーならば、制御用PCにパラレルポートがなくても心配ご無用ということです。初心者さんにはうれしいかもしれませんね。このコントローラーに付属する「USBCNC」というソフトには、便利なことに簡易的なCAM機能が備わっています。後述の「CAMソフト」の説明も読まれた上で、選定の参考にしてみてください。

CNCソフト

 では、具体的にCNCソフトはどんな仕事をするのでしょう。ここで頭のすみっこに保存していただきたい単語が「Gコード」です。これはギターコードじゃありません。アナログテレビ時代の録画予約用の数字でもありません。ここで使うGコードとは、作業命令を数値化した“プログラム”です。「え! プ、プログラム……?」と身構えなくても大丈夫です。後述のCAMソフトで触れますが、プログラムと言っても難しいものではありません。

 このGコードに従って各軸のステッピングモータを動かしたい時には、ドライブ基板に作業命令をしてあげなければいけません。ところがドライブ基板はGコードを直接理解できませんので、理解してもらえる「回転パルス」とか「回転方向」の信号の形に変換して伝えてあげる必要があります。その役割を受け持つのが「CNCソフト」なのです。

 さて最後はCAD・CAMの解説です。無償のソフトを使うことで初期費用をケチるポイントはここです。

CADソフト

 CAD(キャド)とは、作りたいものの形状を描いてデータ化するツールです。2D CADと3D CADがありますが、その違いはソフトが扱える座標軸の数です。2D CADは「縦・横」の2軸まで。つまり、紙に描いた図面をそのままデータ化するものと考えてください。これに対して3D CADは、「縦・横・高さ」の3軸を用いて仮想空間に立体が描けます。これにより、曲線を多用した複雑形状品をデータ化することができるのです。

 以前は一般人には手が届かなかった3D CADも、3Dプリンタのブームに乗って無償ソフトが登場し始めました。ただ、3D CADはPCのCPUやグラフィックスカードなどにそれ相応の高スペックを要求するので要注意です。ですので、「超入門」の当連載では、「流れを一通り体験してみる」ことを目的として、初めてでも使いやすくて動作の軽い、無償の2D CAD「AR-CAD」を使って手順を解説していきます。

 AR-CAD

CAMソフト

 CAM(キャム)とは、CADで作図したデータを取り込み、先述の「Gコ―ド」を自動で作成してくれるソフトです。超便利なこのCAMソフトのおかげで、初心者さんでも手順を正しく踏めば、念願の“CNCフライスデビュー”が果たせるのです。

 CAMソフトにも、CADと同じく2D CAMと3D CAMがあります。CAD(特に2D CAD)は情報を整理して絵を描くツールなので無償ソフトも多いのですが、CAMソフトは実際に機械を使って加工する人にしか用がありません。しかも初心者さん向けに分かりやすい手順でGコードを作成してくれる親切な無償ソフトを探すのは大変です。そんな数少ない中から探し出し、実際に使ってみて「あ。これはオススメかな」と思ったのがこちらです。

 以下は海外製の無償ソフトですが、日本語パッチが用意されているので安心して導入できます。

 G-Simple(「FreeCAMでいこう!」)

 また、ありがたいことにガイドブックも販売されています。

 G-Simpleは2D CAD機能を兼ね備えたCAMで、作成したGコードは加工実行の前にシミュレーション(アニメーション)で確認できます。このソフトを使って一通りの作業をするとGコードの示す意味が分かってくると思います。ただ、あくまで私見ですが、CAD機能は少々使いにくさを感じました。なのでAR-CADで作成したデータを取り込む方が楽かなーと思います。

 そしてもう1つ。

 AION(「NC-TOOL」)

 こちらはフリーではなく試用版の紹介になりますが、日本生まれのCAMソフトで、やはり2D CAD機能が備わっています。操作の何もかもが直感的に行え、なおかつ、AIONの中でCADとCAMは単独行動ができるため、同時に表示して2つの作業を平行して行うことが可能です。もともと製造現場で使われている大型CNCフライスの制御装置に対応するように作られているため、G-Simpleと比較すると少々予備知識を要します。なので、ある程度CNCフライスの扱いに慣れてきたらお試しされるといいかもしれません。ガイドブックはありませんが、公式サイト内メニューの「動画による操作説明」がとても分かりやすいです。


 次回は、「加工するために必要なもの。必要なこと」の説明を交えながら、いよいよ段取りの第一歩、「設計」について説明していきます。

Profile

藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」



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