東京大学大学院工学系研究科の片岡一則教授らの研究グループは、粒径50nm以下の抗がん剤を内包した高分子ミセルをマウスの全身に投与すると、リンパ節に転移したがんに効くことを明らかにした。
東京大学は2015年5月13日、同大大学院工学系研究科の片岡一則教授らの研究グループが、粒径50nm以下の抗がん剤を内包した高分子ミセルをマウスの全身に投与すると、リンパ節に転移したがんに効くことを明らかにしたと発表した。
リンパ節に転移したがんは、既存の治療法では根治が困難で、これまで効率よく薬剤を届ける方法が見つかっていなかった。
今回同研究グループでは、リンパ節に転移したがんに対して、白金制がん剤を内包した粒径30nm、70nmの高分子ミセル型ナノキャリアと、臨床で用いられている粒径80nmのドキシル(ドキソルビシン内包リポソーム)の効果を比較した。
検討の結果、粒径30nmのナノキャリアのみが、リンパ節に転移したがん巣内の血管を透過したという。さらに、転移巣の深部へ浸透することも明らかにされた。
同成果は、リンパ節に転移したがんを治療するためのナノキャリアを設計する上で、粒径の制御が重要であることを示した最初の例となる。今後は、全身に投与してリンパ節に転移したがんを治療できるドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発や、リンパ節への転移がんの保存療法の発展に役立つことが期待されるという。
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