「3Dモデラー」が未来の花形職業になる日3次元CADベンダー×3Dプリンタベンダーが語る(1/4 ページ)

無償3次元CADツールや数万円で購入できる3Dプリンタの登場により、モノづくりを取り巻く環境やビジネスモデルが大きく変わろうとしている。そうした変化を3次元CADベンダー、3Dプリンタベンダー自身はどのように見ているのか? オートデスクとXYZプリンティングジャパンの担当者が語る。

» 2015年06月12日 11時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 誰もが無償で3次元CADツールを入手でき、数万円で3Dプリンタを購入できる昨今、モノづくりを取り巻く環境やビジネスモデルそのものが、大きく変化しようとしている。そのような中、3次元CADベンダー、3Dプリンタベンダーはどのような考えをもって、今の市場を、ビジネスを、個人のモノづくりを見ているのか?

 今回、オートデスク 技術営業本部 シニアマネージャーの塩澤豊氏と、XYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏をお迎えし、3次元CADベンダー、3Dプリンタベンダーというそれぞれの立場でお話を伺った。

 聞き手・進行役は、MONOistの連載「3DCAD&3Dプリンタで機構を作る」でもおなじみの志田穣氏が務めた。

場所は、オートデスクの会議室 左から聞き手・進行役の志田穣氏、オートデスク 技術営業本部 シニアマネージャーの塩澤豊氏、XYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏。場所は、オートデスクの会議室をお借りした

なぜ、オートデスクが無償3次元CADツールを提供しているのか

志田氏 現在、オートデスクは“無償”の3次元CADツールを提供しています。一般の方でも気軽に入手できる無償ツールをリリースするに至ったきっかけは何だったのでしょうか?

塩澤氏 設立から33年、オートデスクはプロ向けの業務用デザインツールと関連製品を主に販売してきました。この業務用ツールの出荷ライセンス数は約1200万になります。そんなわれわれが、一般向けのツールを提供することになった大きなきっかけは「iPad」の登場です。自動車などの工業デザイナー向けに提供していたドローイングツールの技術をiPad向けに移植して、「Autodesk SketchBook Pro」というアプリをリリースしたのです。iPadの注目度の高さとアプリの無償配布のダブル効果で、これが大ヒットしました。この反応から「一般の方でもオートデスクのデザインツールに興味を持ってくれるのだな」ということが分かったんです。

オートデスク 技術営業本部 シニアマネージャーの塩澤豊氏 オートデスク 技術営業本部 シニアマネージャーの塩澤豊氏

 そして、エントリーユーザー向けの「Autodesk 123D Design」(以下、123D Design)や、より先進的な機能を盛り込んだ「Autodesk Fusion 360」(以下、Fusion 360)といった無償3次元CADツールなどを提供していったのです。現在、これら一般向けツールのダウンロード数は約1億7000万にもなります。“有料”というハードルを取り去ることで、あっという間に広まりましたね。このように無償ツールを広く一般に提供するまでは、オートデスクの名前を知っている人は限られていましたが、今ではそれなりに知ってもらえていると思います。

 最初のうちは、日本各地で行われる123D DesignやFusion 360のワークショップなどをチェックするようにしていたのですが、開催数・参加人数があまりにも多いので、ウオッチするのをやめてしまったくらいです。本当に多くの方に利用してもらっていますね。


3Dプリンタ普及のカギは、3Dデータの入手性

志田氏 XYZプリンティングは、安価で使いやすさに配慮したパーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチ」シリーズや、プロシューマ向けの光造形方式3Dプリンタ「ノーベル」シリーズを展開しています。3Dプリンタ市場がいま伸びている理由はどこにあるのでしょうか? また、今後さらに成長するために必要な要素は何でしょうか?

新井原氏 1つは、技術革新とそれによる低価格化が考えられます。また、3Dプリンタ関連技術の特許切れにより、特許にかかるコストが減少したことも大きな要因といえます。参入企業が増えて、ユーザーが選択できる機種も増えています。3Dプリンタは、製造現場で広く活用されていますが、XYZプリンティングがメインターゲットとするパーソナル3Dプリンタの市場はまだまだこれからです。企業同士が切磋琢磨するだけでなく、一緒に業界全体を盛り上げていかないといけません。

 そういう意味で、3Dデータの入手性についても真剣に考える必要があります。XYZプリンティングのミッションは、家庭内での3Dプリンタの普及。そして、男性だけでなく、女性や子どもなどに3Dプリンタを使ってもらうことを目指しています。3Dプリンタを多くの方に使ってもらうには、3Dデータを手軽に入手できることが必要です。すべての人が3次元CADなどでモデリングできるわけではありませんからね。

XYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏 XYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏

 現在、XYZプリンティングが運営している「XYZクラウドギャラリー」では世界中のクリエータが3Dモデルデータを公開しています。ダウンロードして利用することはもちろんのこと、「なるほど、こんなものが作れるのか!」という発見や驚きの場として活用してもらいたいと思っています。


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