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» 2015年07月03日 08時00分 UPDATE

医療技術ニュース:材料のみで血管新生を促進する組織接着性多孔膜を開発、従来比5倍の能力

物質・材料研究機構は、細胞増殖因子を添加せずに、材料のみで新しい血管の形成を促進する組織接着性多孔膜を開発したと発表した。ヘキサノイル基を導入したゼラチンを用いた多孔膜で、高い血管新生の能力と組織接着性を備えている。

[MONOist]

 物質・材料研究機構は2015年6月16日、細胞増殖因子を添加せずに、材料のみで新しい血管の形成(血管新生)を促進する組織接着性多孔膜を開発したと発表した。同機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)生体機能材料ユニットの田口哲志研究者らによるもので、同月9日に「Biomaterials」のオンライン電子版で公開された。

 糖尿病で血流が不足している部位などの血管新生を促すため、これまで材料に細胞増殖因子を浸み込ませて徐々に放出させる研究や、細胞増殖因子を産生する幹細胞と材料を組み合わせた研究などが行われてきた。しかし、細胞増殖因子を含んだ材料を患部に留めておくための組織接着技術については、ほとんど検討されていなかった。

 同研究グループでは、組織接着性が高く、細胞増殖因子との結合性も高いとされるヘキサノイル基(炭素数6個の脂溶性分子)をブタ皮膚由来のゼラチンに化学修飾したヘキサノイル化ゼラチンを用いて、多孔膜を開発した。この多孔膜は、全体の容積に対する気孔の割合を高くすると、従来の多孔膜の約5倍という高い血管新生の能力を示したという。

 また、新開発の多孔膜は、生体内に存在する血管内皮細胞増殖因子をキャッチし、内部に取り込むことができる。その後、多孔膜が治癒に伴い生体内で産生される酵素によって分解されることで、血管内皮細胞増殖因子も徐々に放出され、血管新生を促進させることが分かった。これは、新開発の多孔膜が、自己治癒力を高めることで、血管新生を促したことを意味するという。さらに、新開発の多孔膜は、従来の多孔膜の約3倍もの組織接着性があることも明らかになった。

 新開発の多孔膜は、高価で不活性化しやすい細胞増殖因子の添加が不要で、材料のみで血管ネットワークの形成を促進できる。そのため、3次元大型臓器を再生するための血管組織を形成する材料として、再生医療分野への応用が期待できるという。また、糖尿病により血流の不足した下肢などで効果的に血管を再生することが期待でき、治療を受ける際の医療費の削減も可能になるとしている。

photo 多孔膜をラット皮下へ埋入して7日後の組織像。赤丸は新生血管を示す。従来の多孔膜(左)は新たに形成された血管の量が少ないのに対し、開発した多孔膜(右)には、多くの血管が形成されている。
photo 画像解析により血管新生マーカー(CD34)を定量化した結果。従来の多孔膜(左)と比較して、開発した多孔膜(右)は、約5倍の血管組織占有率がある。
photo 開発した多孔膜の大腸組織に対する接着強度比較の結果。従来の多孔膜(左)と比較して、開発した多孔膜(右)は、約3倍の組織接着強度がある。

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