「受注生産」から「ライン生産」へ、新ロケット「H3」は商業市場に食い込めるか宇宙開発(3/3 ページ)

» 2015年07月09日 14時00分 公開
[大塚実MONOist]
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日本のロケットは生き残れるのか

 H3ロケットで抜本的な低コスト化を進めるのは、このままでは近い将来、日本独自の宇宙輸送手段が維持できなくなるという危機感が背景にある。

 現在H-IIA/Bロケットはほぼ官需に依存しているが、それだけでは機数が限られ、宇宙分野から撤退する企業も相次いでいる。今後、官需は縮小が見込まれており、その分を商業市場で補う必要があるのだ。

photo H3ロケットでは、官需依存からの脱却を狙う

 H3プロジェクトの岡田匡史プロジェクトマネージャは、「H3は技術開発ではなくて事業開発。顧客の声を第一に考えたロケットになる」と説明する。そのために、まず顧客へのヒアリングを行い、要望を分析。世界トップクラスの信頼性とコストを実現しつつ、柔軟性などサービス面にも注力するという。

photo JAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャ

 ただし、状況は決して楽観できるものではない。現在でも、米SpaceXの「Falcon 9」ロケットの打ち上げコストは既にH-IIAの半分程度。さらに各国で新型ロケットの開発が進められており、H3はそれらと勝負しなければならない。商業市場に食い込み、打ち上げ機数を確保できないと、50億円という価格の実現も難しくなってしまう。本当に海外から顧客を持ってこられるのか、見通しは不透明だ。

photo H3ロケットの競合となる海外の次世代ロケット

 今後のスケジュールであるが、基本設計は2015年度で終わらせ、2016年度から詳細設計を開始する予定。実機の製作は2018年度から始め、試験機1号機を2020年度、試験機2号機を2021年度に打ち上げ、結果の評価を経て、運用段階へ移行する計画だ。

photo 開発スケジュール。H-IIAと同じく、試験機は2機打ち上げる

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