カーエアコンの暖房はなぜ暖かくなるのかいまさら聞けない 電装部品入門(20)(1/4 ページ)

カーエアコンが活躍するのは暑い夏の日だけじゃない。寒い冬の日に車室内を暖めてくれる暖房も重要な機能の1つだ。今回は、カーエアコンの暖房の仕組みに加えて、嫌な臭いを防ぐエアコンフィルター、設定温度に合わせて車室内の空調を自動で行ってくれるオートエアコンについても説明する。

» 2015年07月10日 10時00分 公開

カーエアコンは冷房だけじゃない! 暖房も重要

 前々回前回は、冷房システムについて詳しくご説明しました。今回は、カーエアコンシステムのもう1つの重要な機能である暖房(ヒーター)についてお話しします。

 冷房は冷凍サイクルによって繰り返し冷媒を気化させることでエバポレーターを氷の状態にし、そこに風を通して室内に送り込むことで冷風を作り出していました。

 暖房も冷房と同じように、熱源となるものに風を通すことで温風を作り出すことになるのですが、その熱源は何だと思いますか?

 一般的な住宅内で用いる暖房の熱源と言えば電熱線(ストーブなど)などがありますが、それはもともと熱源がない所に熱を生み出すためのものです。内燃機関を動力源とする自動車の場合は電熱線を用いていません。

 燃料を燃やして動力にしているエンジンそのものが熱の塊ですから、それを熱源として使えば、電熱線を使わなくても必要十分な温風を作り出せるのです。

ヒーターコア

 そのための仕組みが、エンジンを冷却するために循環させているラジエーター液(冷却水)をヒーターコアという部品に循環させるというものです。

 このヒーターコア、冷房におけるエバポレーターの熱いバージョンと表現すれば最も分かりやすいと思います。

ヒーターコアの外観 ヒーターコアの外観 出典:カルソニックカンセイ

 エンジンで加熱されたラジエーター液は、その液温が100℃近くで維持されるように設計されています。このため、100℃という液温をそのままヒーターコアが全力で受けてしまうとかなり室温が上昇してしまいます。

 そこで、ウォーターバルブという弁を用いてヒーターコアに流入するラジエーター液量を調節します。加えて、エアーミックスダンパーによってヒーターコアを通過する風量を変化させることで、求められた温度設定に合致した温風が出せるようにしているのです。

 以下の図で、カーエアコンシステムにおける暖房時の状態を分かりやすく見せるために、暖房温度設定最大/外気導入/足元吹き出し状態における空気の流れを示します。

暖房温度設定最大/外気導入/足元吹き出し状態における空気の流れ 暖房最大/外気導入/足元吹き出し状態における空気の流れ(クリックで拡大)

 また参考のために、冷房最大/外気導入/顔面吹き出し状態における空気の流れも示しておきましょう。

冷房最大/外気導入/顔面吹き出し状態における空気の流れ 冷房最大/外気導入/顔面吹き出し状態における空気の流れ(クリックで拡大)

 上記のイラストをご覧になればお分かりいただけると思いますが、ヒーターコアはエバポレーターの後工程に設置されています。

 エバポレーターはコンプレッサーを起動することにより冷風を生み出しますが、冷風を生み出す他にも通過した空気から水分を奪う役割も果たします。

 車室内と車外との気温差が大きくなる寒い日は、湿度を呼気や皮膚から排出する人間が密閉空間である車室内にいると、どうしても窓などに結露を生じてしまいます。

 そこで少しでも湿度を減少させるため、暖房なのにあえて冷風を生み出すためのエバポレーターを通過させることで結露を生じにくくすることができます。

 それでも結露が生じてしまう場合には、デフロスター機能によって、温かく乾燥した空気をフロントウィンドウに強制的に送り込めば、快適性を落とすことなく視界を確保できるようになります。

 余談ですが、暖房はラジエーター液の熱量を使って温風を作り出しますので、広い目で見ればエンジン冷却の一端を担っているといっても過言ではありません。

 本来は暖房を使用する寒い季節にエンジン冷却を意識しなければいけないことは少ないのですが、仮にエンジントラブルなどでオーバーヒートになりそうな場合、暖房を最大出力状態にすることで、ラジエーターの液温上昇を遅らせることができます。

 これは真夏でも同じことができますが、あまりの暑さに命に関わる可能性がありますのでご注意ください。

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