インタビュー
» 2015年07月16日 11時00分 UPDATE

【再録】ITmedia Virtual EXPO 2015 春:童夢創業者・林みのる氏が大いに語る――日本レーシングカー産業への提言 (1/5)

2015年2月に開催したバーチャル展示会「ITmedia Virtual EXPO 2015 春」では、レーシングカーのコンストラクターである童夢の創業者・林みのる氏へのインタビュー講演をお送りした。林氏が第一線からの引退時期として公言している70歳の誕生日(2015年7月16日)を記念し、このインタビューの模様を記事化した。

[朴尚洙,MONOist]

 2015年2月に開催したバーチャル展示会「ITmedia Virtual EXPO 2015 春」で、異色の講演があったことをご存じだろうか。タイトルは「童夢創業者が語る、日本レーシングカー産業の未来」。レーシングカーのコンストラクターである童夢の創業者の林みのる氏に、日本のレーシングカー産業(レース産業ではなく)を成長させることの意義などを中心に、話を聞かせていただいた20分ほどのインタビュー映像である。

 林氏は、このインタビュー映像や童夢のWebサイトなどで、70歳を迎える2015年7月16日をめどに第一線からの引退することを公言している。実際に、林氏引退後の童夢の後継体制も既に固まっている。引退するとは言っても、ブログ「林みのるの穿った見方」などで健筆を奮っておられ、至って元気だ。

 本稿では、その2015年7月16日を記念し、「童夢創業者が語る、日本レーシングカー産業の未来」のインタビュー内容を記事化した。林氏の日本のレーシンカー産業に対する辛口のエールをご堪能いただきたい。



MONOist 現在の日本のレーシング産業をどうみていますか。

林氏 私が、レーシングカーを作り始めたのってもう50年弱も前ですから、全然半世紀以前のことで事情は違うんです。私なんか好きでやりはじめたから、レース界がどうとか概念もなくて、自分のことしか見えてなかったんで好き勝手してきましたけど。夢として持ってたのは、好きなことをビジネスにしてそれで稼げて、それを続けられればいいなというのは漠然と思ってたんだけれども。いつまでたってもレーシングカーを作るということが金にはならなくてね、極端に言ったら今も金にはならないんですよ。

童夢創業者の林みのる氏 童夢創業者の林みのる氏

 まあまあウチの会社が日本のレース界では成功している方だと思うんだけど、それでもカツカツで何とかやりたいことやれているというぐらいで。ウチらが17回挑戦してきたル・マン24時間レースというのも、もっとちゃんとした体制じゃないと勝てないんですよ。そこまで行かないで、まあ何とか作って持っていって、走って帰って来てというのが精いっぱい。これが多分今日本のレース界の限界だと思うんですね。唯一の成功例がこのぐらいのレベルだから、後は推して知るべしで。果たしてレース業界という産業があるのかどうかすらもちょっと疑わしいような状況なんですけれど。

 まあそうばっかりは言ってられないんで、何とか改善していかないといけないということで、やっと日本のレース界っていうモノ自体のスタンス・視点から見るようになってきて。これは何とかしないといけないということで、いろいろ手だてはしてきたんですけど、それが成就するのと、自分が年食うのとの追いかけっこで。そろそろゴールが近づいてきたので、種はまいたんですけどちょっとまだ芽が出てないというようなところが現状です。

MONOist F1のようなフォーミュラカーとル・マンのようなGTカーどちらが好きですか。

林氏 そうですね、フォーミュラが好きな人は好きなんですけれど、私なんかスポーツカーの方が好きなんでね。より現実の車に近いというのもあるし、デザインの余地もあるし。いろんな面でスポーツカーが好きなんです。私なんかに言わせると、フォーミュラなんか自動車じゃないと思ってるんでね。フォーミュラ好きな人とは絶えず意見がぶつかりますけど。

 じゃあF1はどうなるんだって言いますけど、フォーミュラという形は、その大昔およそ80数年前に、アウトオニオンとかいろんないにしえのクルマが、サイクルレンダーとかフェンダーとかを付けて走ってたころに、あれ取っ払ったほうが早いと思ってタイヤ丸出しで走ったのが原型。要するにレトロな形なんですよ。あれはすごい危険でね。良く見れば分かるようにタイヤ同士がかみ込むと、野球のピッチングマシンみたいにクルマが飛んでいったり、よそのクルマの上に乗ったりするわけですよ。その乗るところの部分っていうのはフォーミュラ、オープンでしょ? セナもモノが飛んできて亡くなってますし。その前から何人も何か飛んできて亡くなったり、この間(2014年)の鈴鹿でも頭部強打して、ギリギリ助かったみたいですけど。いわばね、すごい危険なクルマなんです。ある種蛮勇を競うところがあって、それが何ていうかな、コロシアムの殺し合いみたいな。

 そういうところが貴族たちが見てて喜ぶみたいな。はっきり言って趣味悪いんですよ。機械としても、じゃあ空力というのもがどうかというと、空力の作用する部分がすごい少なくて、だからいろんな羽根付けたりしてやってますけど、もっと根本的な問題っていうのがあんまり関係ない。だから技術領域としても面白くないし。ドライバーが速さを競うという意味では純粋なマシンなんだろうけれど、技術的にもう分野が狭いし、安全性も低いし。私は全然評価してないし、早く無くなればいいと思ってるぐらいです。

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