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» 2015年07月24日 08時00分 UPDATE

医療技術ニュース:脳損傷時の記憶障害の程度を予測する方法を開発

順天堂大学は、脳の領域が損傷を受けた際に示す記憶障害の程度を予測する方法を開発し、実証したと発表した。記憶課題遂行中のサルの脳活動をfMRI法を用いて計測し、さらにパターン認識の計算手法を用いることでアルゴリズムを開発した。

[MONOist]

 順天堂大学は2015年7月1日、脳の領域が損傷を受けた際に示す記憶障害の程度を予測する方法を開発し、実証したと発表した。この研究は、同大学医学部生理学第一講座の長田貴宏助教らのグループによるもので、6月30日に科学雑誌「PLOS Biology」電子版に発表された。

 大脳の前頭葉の前方に位置する前頭前野は記憶や思考などに関与しており、特に記憶課題遂行中には前頭前野の複数の部位が活動することが知られている。しかし、なぜ特定の前頭前野の部位の損傷が記憶障害を引き起こすのかは分かっておらず、損傷で記憶障害を引き起こす部位の位置やその障害の程度について予測する方法も確立されていなかった。

 今回の研究では、サルに時間順序識別記憶課題を課し、機能的磁気共鳴画像法(fMRI法)を用いて出来事の時間順序の記憶の想起に関わる脳活動を計測した。時間順序識別記憶課題では、図形を順番に示した後、図形リストに含まれていた2つの図形を同時に示し、どちらが後に出てきたかを思い出させて選択させた。

 このときのfMRI計測によって、前頭前野の複数の部位を含む、課題遂行時に活動する領域が同定された。そして、各領域間の相互作用を解析すると、これらの領域はそれぞれ協調し合いながらネットワークを形成して活動していることが分かった。

 さらに、課題遂行時のネットワークの活動変化に着目し、パターン認識(サポートベクターマシン:SVM)の計算手法を用いることで、課題遂行の成績を予測することができた。加えて、ある領域をこのネットワークから仮想的に除き、SVMにどの程度影響するかを調べることによって、これらの脳領域が損傷を受けてネットワークから取り除かれた際の影響を定量的に予測するアルゴリズムを開発した。

 このアルゴリズムを用いると、課題遂行時に活動する部位のうち、過去の損傷実験によって報告されている損傷を受けて障害を示す部位とそうでない部位の違いを説明できた。損傷時に障害を示す部位(9/46d野)は、記憶想起時に活動するネットワークの中で他の部位と多く結び付いており、「ハブ」として脳の情報処理における中心的な役割を果たしていることも突き止められた。

 この成果は、記憶の想起を支える大脳ネットワークの作動原理の解明を進めるとともに、脳損傷や脳外科手術における後遺症の予測に大きく役立つ可能性があるとしている。

photo 時間順序識別記憶課題
photo 時間順序識別記憶課題遂行中に活動する前頭葉領域
photo 今回開発された脳領域損傷による影響を予測するアルゴリズム
photo 大脳ネットワークにおける各領域で損傷時に影響を受けると予測される部位

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