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» 2015年08月21日 10時00分 UPDATE

クルマから見るデザインの真価(6):ヤマハ発動機の“乗る楽器”とヤマハの“愛着の乗り物”、息づくYAMAHAのDNA (1/4)

楽器のヤマハが乗り物、乗り物のヤマハ発動機が楽器という形で、それぞれのデザイン部門がアイテムを交換してデザインする「project AH A MAY(プロジェクト アーメイ)」。4つのデザインコンセプトモデルには、図らずも同じトーンが漂っており、両社にYAMAHAのDNAが息づいていることを感じさせた。

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]

 楽器のヤマハ株式会社(以下、ヤマハ)と乗り物のヤマハ発動機株式会社(以下、ヤマハ発動機)という“2つのヤマハ”デザイン部門による「project AH A MAY(プロジェクト アーメイ)」。前回はこのプロジェクトの背景や思いなどについて、ヤマハの川田学氏(デザイン研究所 所長)、ヤマハ発動機の長屋明浩氏(デザイン本部 本部長)のお二方に語っていただいた様子をお届けした。

⇒前回記事:2つの「YAMAHA」がデザイン交流する理由――両デザイン部門トップに聞く

 ここで少しおさらいすると「project AH A MAY」は、2つのヤマハのデザイン部門がそれぞれの会社の製品アイテムを交換してデザインする中で、互いを「鏡」と見立て、お互いを映し出すことで、それぞれのアイデンティティーを見つめ直す試みだ。そしてこの試みは「Two Yamahas, One Passion〜デザイン展2015〜」というイベントとして一般公開された。

 今回は、「project AH A MAY」から生まれた作品(デザインコンセプトモデル)を見ていきたい。それぞれのヤマハでアイテムを選んだ後は、途中段階で見せ合わない、挑戦の幅を保つために互いに干渉しない、というルールで進められた作品制作プロセスもこのプロジェクトの特徴である。公開されたデザインコンセプトモデルはそれぞれのヤマハで2つずつ、合計4つが公開された。

「project AH A MAY」の4つのデザインコンセプトモデル 「project AH A MAY」の4つのデザインコンセプトモデル。左から、「√(ルート)」、「FUJIN(God of the Wind)」、「0±0(ゼロプラスマイナスゼロ)」、「RAIJIN(God of the Thunder)」(クリックで拡大) 出典:ヤマハ、ヤマハ発動機

ヤマハ発動機は“乗る楽器”

 ヤマハ発動機の2つの作品が見た目で共通するのは“乗る楽器”というところだろうか。アイテムとして選ばれたのはマリンバとドラムス。これらのアイテムのデザインで行われたことは、われわれの頭の中にあるそれぞれの楽器に対する「こういう形」をリ・スタイリングするのではなく、演奏する人、聴く人の両者にとって新しい楽器の姿を提案している。

 ちなみに「FUJIN(God of the Wind)」「RAIJIN(God of the Thunder)」と対の名前を与えられたマリンバとドラムスは、それぞれのデザインが選ばれる過程で対になっていったのではなく、当初から対のものとして提案された作品だったとのことである。

FUJIN/マリンバ

 簡単に表現すると2人乗りマリンバである。マリンバのデュオ演奏というと通常は2人の演奏者が並ぶ姿を想像するが、FUIJINはモーターサイクルの2人乗りのように前後に2人が乗り込み、円周上に配置された音板をたたいて演奏する。円形の音板は回転する仕組みになっているので、2人で演奏するということに加えて、偶発性のある音も生まれるという具合だ。

 後ろ側の演奏者がときに音板をたたき、ときに音板を回転させ、という実際の演奏の様子は、聴覚/視覚の両方で新鮮なものとなっている。

「FUJIN」を演奏する様子 「FUJIN」を演奏する様子(クリックで拡大)

RAIJIN/ドラムス

 こちらも簡単に表現すると中に乗り込むドラムスといったところか。演奏者の周囲、上下・前後・左右全てにドラム楽器が配置されている。球体をなす楽器の中で激しく動き回って演奏している様子は、俵屋宗達の雷神図のようである。

「RAIJIN」を演奏する様子 「RAIJIN」を演奏する様子(クリックで拡大)

 ここでそれぞれのプレスリリース文も紹介しよう。「マリンバを二人で演奏しエナジーを増幅させます。モーターサイクルの2人乗りさながらの奏法は、お互いのスイングやギャップが生む偶発性を生かしたスリリングな演奏を楽しめます」(FUJIN)。「既存のメソッドを超え人間の表現欲を満たす理想的な構造を探求。ドラム楽器の中で暴れまわるように演奏できる球体は、演奏者を中心に噴出するエナジー、増幅する音世界を視覚化します」(RAIJIN)。どちらも音と視覚の両面から新たな体験の創造を意図していることが読み取ることができる。

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