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» 2015年09月10日 12時00分 UPDATE

アナリストが解説する:「3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版」のここがポイント (1/3)

米国の調査会社Gartnerが発表した「3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版」のポイントをガートナー ジャパンの主席アナリストに聞いた。キーワードは「医療分野での利活用」。

[八木沢篤,MONOist]

 米国の調査会社Gartner(以下、ガートナー)は2015年8月下旬に、“3Dプリンティング技術”の動向に特化した「3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版」を発表した。

 先行して発表された「先進テクノロジーのハイプサイクル2015年版」の中では、「民生用3Dプリント技術(Consumer 3D Printing)」「企業向け3Dプリント技術(Enterprise 3D Printing)」「臓器移植用3Dバイオプリンティングシステム(3D Bioprinting Systems for Organ Transplant)」「ライフサイエンスR&D用3Dバイオプリンティング(3D Bioprinting for Life Science R&D)」の4つが3Dプリンタ関連技術としてフォーカスされていた。

 しかし、今回の3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版の中では、3Dプリンティング全般における技術動向や適用分野が21に分類され、それぞれがハイプサイクル上にプロットされている。

 本稿では、ガートナー ジャパン リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー セキュリティ・イメージング&プリントサービス 主席アナリストの三谷智子氏の解説を交えながら、3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版の主要ポイントについて紹介する。

ガートナー ジャパン リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー セキュリティ・イメージング&プリントサービス 主席アナリストの三谷智子氏 ガートナー ジャパン リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー セキュリティ・イメージング&プリントサービス 主席アナリストの三谷智子氏

民生用3Dプリント技術と企業向け3Dプリント技術の動き

 はじめに、先進テクノロジーのハイプサイクル2015年版でも取り上げられていた、民生用3Dプリント技術と企業向け3Dプリント技術の動向について見ていこう。

3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版 3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版(出典:Gartner) ※画像クリックで拡大表示

 民生用3Dプリント技術に関しては、メディアなどで頻繁に取り上げられ、広く一般からも大きな期待が寄せられる「『過度な期待』のピーク期」を過ぎて、「幻滅期」へと移行しつつあるという。この状況について三谷氏は、「民生用3Dプリンタで中心となる熱溶解積層(FDM)方式の3Dプリンタの価格は、ここ数年でかなり下がり、数万円で手に入るようになった。しかし、そうした機器を実際に手にしたユーザーは、現状の造形スピードや品質、使用できる素材のバリエーションなどに満足していない。期待していたよりもできることが限られてしまうという現実に加え、日常的に使用するシーンが確立されていないことも普及の足止めになっているのではないか」と分析する。

 ただ、幻滅期に入ったからといって必ずしもその技術が消えてしまうわけではないという。「恐らく、研究者や装置メーカーなどは幻滅期の間も、課題解決に向けた技術革新に注力していくだろう。数年後、そうした取り組みがあらためて見直されて、再び活用してみようという人たちが増え、そこから活用事例などがたくさん出始めてくるようになれば、『生産性の安定期』への道筋も見えてくる」と三谷氏は説明する(関連記事:“幻滅期”に入った民生3Dプリンタ、IoTや自動運転は“過度の期待”がピークへ)。

ハイプサイクル ハイプサイクルについて(出典:Gartner)

 一方、幻滅期を脱し、「啓蒙活動期」にある企業向け3Dプリント技術に関しては、従来用いられているデザイン検証/試作用途に加え、治具や最終製品などをハイエンド3Dプリンタで直接製造してしまおうという動きや実際の活用事例が多く出始めているという。「製造業のプロセスの中に組み込まれ、従来の製造方式と補完し合いながら利活用が進んでいる。今後、2〜5年経過すると生産性の安定期を迎えるだろう」と三谷氏は説明する。特に、ここ数年で3Dプリンタを活用した直接製造に関する話題を見聞きするようになった。その代表例が、Stratasysが展開する「DDM(Direct Digital Manufacturing)」だ。海外事例としては自動車や航空機、ロケットなどの一部部品や治具がDDMで直接製造されているという。また、日本でもダイハツ工業の軽スポーツカー「コペン」向けの着せ替えパーツ「Effect Skin」をDDMで手掛けようとしている(関連記事:「コペン」の着せ替えパーツが3Dプリンタで作れる「Effect Skin」とは)。

ダイハツ工業の軽スポーツカー「コペン」向けの着せ替えパーツ「Effect Skin」 (参考)ダイハツ工業の軽スポーツカー「コペン」向けの着せ替えパーツ「Effect Skin」

 企業向け3Dプリント技術の発展に寄与しているのが、現在、啓蒙活動期にある「3Dプリントサービスビューロー(3D Printing Service Bureaus)」だという。「特に中小企業の場合、本当に自分たちの製品に使えるのか? どの程度の精度やコストメリットが出せるのか? など、ハイエンド3Dプリンタへの投資に関して慎重だ。そうした状況において、気軽に3Dプリントを試せる部品/製品の試作・製造サービスなどの利活用が増え、順調に伸びてきている」(三谷氏)という。

 ちなみに、最も主流の活用法となっている「試作のための3Dプリント(3D Printing for Prototyping)」は、既に生産性の安定期に入っている。

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