連載
» 2015年09月16日 10時00分 UPDATE

いまさら聞けない 車載セキュリティ入門(2):車車間と路車間の通信を守るためのセキュリティ技術 (1/3)

自動車に搭載される通信機能の中でも今後の採用拡大が見込まれているのが、いわゆるITS(高度道路交通システム)に用いる車車間通信や路車間通信だ。今回は、これらV2X通信を守るセキュリティ技術について解説する。

[岡デニス健五(イータス エンベデッドセキュリティ シニア・コンサルタント),MONOist]

人間の「聴覚」に相当するV2X通信

 今回は、車車間(V2V:Vehicle to Vehicle)通信や路車間(V2I:Vehicle to Infrastructure)通信といったV2X(Vehicle to X)通信におけるセキュリティに焦点を当てたいと思います。

 自動車にとってのV2X通信は、人間の5つの感覚のうち「聴覚」に相当します。すなわち、ある車両が、他の車両やインフラから送られてくるメッセージを聞き取れるようになるからです。その結果、ドライバーの目に入ってこないような周辺情報を入手できるようになります。

V2V通信技術の導入イメージ V2V通信技術の導入イメージ 出典:米国運輸省

 例えば、ドライバーから直接確認できない、2〜3台前方の車両がブレーキ操作を行うと自動的にV2V通信によるメッセージが他の車両に送られます。メッセージを受け取った他の車両のドライバーは、ブレーキ操作を行った車両が直接見えていなくても、このメッセージに適切に反応すれば、余裕を持ってブレーキをかける用意ができます。

 また、交差点における歩行者の道路横断をインフラ側で検知して、交差点で右折/左折しようとしている車両に歩行者が横断している事実をV2I通信によるメッセージが送ることができます。

 これらV2X通信は、自動運転技術を実用化する上でますますその重要性が増しています。

 高レベルの自動運転技術では、受信したV2Xメッセージ(先行車両のブレーキ動作もしくは歩行者の道路横断についての警告メッセージ)に基づいて、車両側で自動的にブレーキをかけることもあり得るのです。

 このV2X通信におけるセキュリティの必要性は明白です。もしも攻撃者による成り済ましメッセージが日常茶飯事になれば、V2X通信の内容をドライバーが信用しなくなって、警告を無視するようになり、正しい警告メッセージに気付かず事故発生につながってしまうという危険性があります。

 自動運転の場合、V2X通信を用いたサイバー攻撃はより危険度を増します。V2X通信に従って自動車が運転判断を行うわけですから、攻撃者が誤動作を起こさせたい場合にはV2X通信を使った成り済ましメッセージは極めて有効です。自動ブレーキや自動駐車のような機能は、車両のブレーキやステアリング操作に影響を及ぼします。もし攻撃者が、上記のようなブレーキやハンドル操作に影響を与える成り済ましメッセージを発信すれば、対象となった車両の乗員の安全性に重大な結果をもたらす事故の引き金を引くことになります。

 だからこそ、車両の安全性に影響を及ぼすV2X通信のような外部からのメッセージに対するセキュリティが必要になるのです。

 もう1つの関心事は、ドライバーの視点から見たV2X通信が、プライバシー侵害の可能性を有していることです。個人情報を含むメッセージが車両から外部に送られたり、簡単にトラッキングができたりする場合、ドライバーにとっては重要なプライバシーの問題になり得ます。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.