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» 2015年09月25日 11時00分 UPDATE

IFA 2015リポート:モーターショー化していないIFAでも感じるクルマの存在感 (1/3)

ドイツのベルリンで開催された世界最大級の家電見本市「IFA」。毎年1月に米国で開催される「International CES」が、自動車メーカーが展示を行うなどモーターショー化している一方で、家電ショーであることを強く意識するIFAはまだそうなっていない。とはいえ、そこかしこで家電との連携が重視されつつあるクルマの存在感は感じられた。

[吉岡佐和子(情報通信総合研究所),MONOist]

 2015年9月4〜9日に、ドイツのベルリンで、世界最大級の家電見本市「IFA」が開催された。米国ラスベガスでは毎年1月初頭に同様の家電見本市「International CES(以下、CES)」が開催されている。CESは、メーカー各社がその年、あるいは以降に発売される新製品発表の場であり、IFAは、CESで発表した新製品のその後を紹介する展示会といえる。

 ただし、IFAは欧州市場に特化しており、CESでは見られない企業も多く出展している他、両展示会に出展している企業でも、欧州市場に合わせてCESとは全く異なる内容の展示を行っている企業も少なくない。

 しかしそれ以上に、CESとIFAで大きく異なる点がある。それは、“家電見本市”とひとくくりにされてはいるものの、CESは家電ショーというよりもむしろITショーの様相が強い。それに対しIFAは完全に家電が主役である。そのため、CESの来場者はビジネスパーソン(Trader)限定だが、IFAは一般消費者にも開放されている。それは、きたるクリスマス商戦に向けて出展社であるメーカーが消費者に新製品をアピールしたいという狙いがあるからと考えられる。しかしそれよりも、多くの子ども達に「自分たちの将来の生活はこうなる」という未来を、実際にモノに触れながら体験できることの意義が非常に大きい。

sp_1650925ifa_01.jpgsp_1650925ifa_02.jpg 「IFA 2015」の様子。前回の2014年の来場者数は、ビジネスパーソンが約14万人、一般消費者が約9万5000人(クリックで拡大)

 実際、IFAには、約14万人のビジネスパーソンに加え、一般消費者が約9万5000人来場するそうだ。会場は子どもたちでいっぱいで、中庭では子どもたちが遊ぶスペースも用意されている。また展示会場内では各社が最新家電を用いて作った食べ物や飲み物をふるまっていたり、ブースによってはアルコールも無償提供しているなど、ちょっとしたフェスタとなっている。

 IFAは、1924年の初回から今年(2015年)で91回目の開催となる非常に歴史のあるイベントだ。主催者であるGFU(Gesellschaft für Unterhaltungselektronik)が、IFAを完全なる家電ショーと位置付けているため、モーターショー化しているCESとは異なり、家電と関係のないクルマの展示は控える傾向にあるようだ。それでも、クルマは日々の生活に欠かせないものであり、「Connected」がキーワードとなることにより、家電などとも密接に連携してくる。

 本稿では、モーターショー化していないIFAにおけるクルマ関連の動向について取り上げる。

5000の車載チップを活用したCar2Xコミュニケーションとは

 Audi(アウディ)は、IFAでブースは構えていないものの、業界のエキスパートが登壇するセッション「+Summit」で、自社のインフォテインメントプラットフォーム「Audi Connect」およびパイロットドライビング(自動運転車)に関する取り組みについて語った。

アウディのEva Buschkrei氏 アウディのEva Buschkrei氏

 アウディのHead of International Business IntegrationのEva Buschkrei氏はまず、「Connectivity」がわれわれの生活のあらゆる場面に組み込まれていることに言及し、クルマも単なる移動手段から「Connected Car」、つまり「4つのタイヤのついたスマートフォン」になると定義づけた。そして、Connected Carがスマートフォンと異なる点として「5000のコンピュータチップを搭載」している点を挙げ、その意義について語った。

 Connected Carがもたらしたエボリューションとして、まずは「インフォテインメント」、そして次の「Car to X Communication(Car2Xコミュニケーション)」という2つのフェーズがあるという。第1フェーズはスマートフォンがクルマにつながり、オンラインミュージックなどのインフォテインメントの提供を実現したことを挙げている。そして第2フェーズはCar2Xコミュニケーション、つまりクルマが、他のクルマやインフラと通信によって“会話”するようになる点を挙げ、その際にクルマに搭載された5000のコンピュータチップが重要になってくると指摘している。これらのフェーズに合わせたアウディの取り組みは以下の通りだ。

 まず第1フェーズとしての「Audi Connect」は、モジュール型のインフォテインメントシステムを採用しており、必要な更新をインターネット経由(リモート)で実現できるため、いつでも最新の環境を提供することが可能となっている。さらに、クラウド型バックエンドインフラストラクチャ「Connected Car Center」により、クラウドを活用してグローバルに展開しながらも、それぞれの国の事情に応じた要求事項にも対応できるようになっている。

 そして第2フェーズである、5000のチップを活用したCar2Xコミュニケーションが未来に大きな影響を及ぼすと主張した。効果の一例として、都市部における未来のモビリティを考えるフォーラム「Audi Urban Future Initiative」の検討結果として、信号の変化を事前に把握して、無駄な加減速を抑え停車することなく走行できるようになるが、同サービスを全ての人が導入するとトータルで約15%、計9千万l(リットル)の燃料消費の削減につながると訴えた。

Car2Xコミュニケーションの例 Car2Xコミュニケーションの例。走行路の先にある信号の変化をメーター内に表示し、無駄な加減速を抑えることで燃料消費の削減につなげられる(クリックで拡大) 出典:アウディ

 そしてその先にあるのがパイロットドライビング(自動運転車)になる。まだコンセプトフェーズであるものの、2015年1月のCESで、既に900kmのドライバーが介在しない自動運転によるテストドライブを実現したこと、同年5月に上海で開催された「CES Asia」では混雑した都市部の道を自動運転で8km走行したこと紹介し、自動運転車が既に現実のものであることを説明した。自動運転車には、運転の安全性、効率性、そしてと快適性の確保が重要であることを強調し、最後に無人のクルマがサーキットを激走する動画を流して講演を締めくくった。

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