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» 2015年10月13日 14時00分 UPDATE

5分で分かる最新キーワード解説:並列処理でビッグデータ解析速度80倍?「HSA」

CPUとGPUが処理を分け合って協働する「HSA(Heterogeneous System Architecture)」の活用により、ビッグデータ解析など重い処理の高速化が期待されています。PCやサーバのみならず、組み込みシステムへの応用も有望な「HSA」について解説します。

[ITmedia]

 今回のテーマは「HSA(Heterogeneous System Architecture)」。現在ではCPUとGPU(Graphics Processing Unit)をワンチップにしたプロセッサが多くなっていますが、プログラム技術のほうは必ずしもその真価を十分に引き出すに至っていません。「HSA」はCPU用とGPU用で別々に作られていたプログラムを1つにし、アプリケーション開発を容易にしようという取り組みです。

 GPUが持つ並列処理能力をグラフィックス以外にも活用し、CPUとGPUが処理を分けあって協働すれば、ビッグデータ解析が80倍の早さで行える可能性があるといいます。PCやサーバのみならず、組み込みシステムへの応用も有望な「HSA」のあらましを見てみましょう。

「HSA(Heterogeneous System Architecture)」とは

 HSA(Heterogeneous System Architecture)とは、CPUとGPUの特長を生かしながら上手に処理を分け合うことで、これまで不可能だった高い性能、低消費電力、低コストで価値あるアプリケーションを作り出すための新しいフレームワーク。プロセッサメーカーのAMDが提唱し、ARMやサムスンなど有力企業が参加して標準仕様が2014年4月に策定された。

  • 「HSA」は何を目指すのか?

 「HSA」の前提になっているのはCPUとGPUをそれぞれマルチコア化して1つのチップに集積する、最近の統合プロセッサのハードウェア構造だ。「HSA」の「H」は「ヘテロジニアス」(異種混合といった意味)のことで、CPU、GPUなどの異なるプロセッサのことを指す。そのシステムアーキテクチャを定義しようというのが「HSA」で、従来異なるプログラミングが必要だった異種プロセッサを統合的に利用し、最新統合プロセッサが秘める可能性を100%引き出すことを目指したハード/ソフト両面からの最適化アプローチだ。

 「HSA」を利用したアプリケーションの実行イメージは図1に見るとおりで、1つのHSA対応アプリケーションで統合プロセッサ上のCPUはもちろん、GPUをグラフィック用のほかに汎用数値演算の並列処理に利用することが、従来よりも簡単・低コストに実現すると期待されている。

「HSA」を利用したアプリケーションの実行イメージ 図1 「HSA」を利用したアプリケーションの実行イメージ(資料提供:日本AMD)
  • 有力企業が集う「HSA」ファウンデーション

 「HSA」は特定プロセッサを対象にするものではないが、現実的にはAMDがx86系CPUとGPUを同一ダイ上に構成したAPU(Accelerated Processing Unit)の効果的な利用が目下の課題となっている。

 AMDが中心になって2012年に発足した業界団体「HSAファウンデーション」が標準仕様を策定しており、標準1.0版は2014年4月18日に公表された。HSAファウンデーションにはAMDの他にもARMやImagination Technologies、テキサスインスツルメンツ、サムスンなどが参加したため、x86系CPUばかりでなく、ARMなど別種のCPUとGPUが統合されたプロセッサ対象にも利用される可能性が広がっている。ゆくゆくはLinuxなどを利用する組み込み系システムの世界でも、CPUの性能にGPUの並列処理性能を組み合わせて生かす高速コンピューティングが、この仕様をきっかけに普及を始めるかもしれない。

  • 登場した第4世代APU

 既にAMDは2013年にKabini(カビーニ)、Temash(テマシュ)の開発コードネームで開発してきたAPUを「AMD Aシリーズ APU」および「AMD Eシリーズ APU」として発表しており、2014年1月にその次の第4世代APU「Kaveri」(カヴェリ)こと「Aシリーズ」を発表している。

 インテルの統合プロセッサではGPUがダイ面積に占める割合は4割程度だが、Aシリーズでは図2に見るように、さらに広い面積をGPUに割いており、x86 CPUコアは最大4基のクアッドコアである一方、同一ダイに構成されたGPUは64基のRadeonコアを1クラスタとしたCU(Compute Unit)が最大8基作り込まれるため、旧来のコアの数え方を踏襲すれば512コアを搭載したことになる(AMDは同社のGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャのGPUコアとして8基と数えている。図3)。これからのGPUの重要性を意識した製品といえる。

AMDのAPU Aシリーズの外観とダイ(オレンジ色に見える部分がGPU) 図2 AMDのAPU Aシリーズの外観とダイ。オレンジ色に見える部分がGPUだ(資料提供:日本AMD)
AMDのAPU Aシリーズの特徴 図3 AMDのAPU Aシリーズの特徴(資料提供:日本AMD)

統合プロセッサで何が解決されたのか?

 このような大規模マルチコア化したGPUとCPUが1つのプロセッサとして構成されることの意味は何だろうか。

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