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» 2015年10月16日 17時59分 UPDATE

ISO 13482:ISO 13482取得はロボットの“安全”を見つめ直す

ホンダやサイバーダインの取得した生活支援ロボットの安全認証規格「ISO 13482」だが、実は具体的な安全設計手順の記載はない。長岡科学技術大学の木村准教授は「安全設計のガイド」とISO 13482を紹介する。

[渡邊宏,MONOist]

 「ISO 13482」は、ホンダの装着型ロボット「honda アシスト」やサイバーダインの装着型ロボット「HAL」の他、パナソニックの離床支援介護器「リショーネ」、RT.ワークスの「ロボットアシストウォーカー RT.1」などが認証を取得している、生活支援ロボットの安全性に関する国際規格だ。

 ロボットがヒトの日常生活に身近なものとなりつつある今、ロボットの「安全性」確保は急務であり、ISO 13482はそのための目印となるものだ。長岡科学技術大学 准教授の木村哲也氏(技術経営研究科 システム安全専攻)が組込みシステム技術協会(JASA)の主催したセミナーでISO 13482の基本について解説した。

長岡科学技術大学 准教授の木村哲也氏(技術経営研究科 システム安全専攻) 長岡科学技術大学 准教授の木村哲也氏(技術経営研究科 システム安全専攻)
「Honda 歩行アシスト」装着例 「Honda 歩行アシスト」装着例

 まず木村氏は「安全」とは事故発生によって身体の自由を奪われないようにするという意味で基本的人権の一部であり、優先して確保されるべきであると安全確保の重要性を唱える。ただ“機械によって危害を加えられない”事は設計者責任の範囲内で行われるべきであり、国際安全規格においても「設計者と使用者との間に公平性があること」が基本的な考え方とされているとも説明する。

設計者責任の範囲 設計者責任の範囲

 機械類の安全性確保を規定する国際的なガイドラインには「ISO 12100」(機械類の安全性−設計の一般原則−リスクアセスメントおよびリスク低減)が存在しており、ISO 13482はその概念を利用したC規格(Type C standards:個別機械安全規格)として策定されている。ISO 12100における安全設計については「リスクアセスメント」「設計者による保護方策(3ステップメソッド)」「使用者による保護方策」を求めており、ISO 13482においても同様の安全設計が求められる。

 ただ、ISO 13482は規格として発行されているが、実はその中に具体的な安全設計手順の記載はない。「安全要求事項と保護方策」や「安全関連制御システムの要求事項」など、安全設計の流れを理解する「安全設計のガイド」(木村氏)といった位置付けだ。なお、A〜Eが用意されている付属書には、活動空間の例示や85項目に及ぶ危険源リストなどの提示なども行われている。

 ロボットという機械に関する安全規格としての大まかな考え方はISO 12100に準拠するが、木村氏は生産設備の安全性要求に比較すると、ISO 13482ではヒトとの接触が前提となる他、「リスクアセスメントの要求が増大する」「人間以外のもの(財産など)も保護対象になり得る」「動作空間のより細かな区分」「利用者の多様性考慮」「代表的危険事象に対応するPLrの例示」などが特徴して挙げられると指摘する。

木村准教授の挙げるISO 13482の特徴点 木村准教授の挙げるISO 13482の特徴点

 またリスクアセスメント(リスク評価)については、合理的に達成可能な領域までリスクを下げる「ALARP原則」、既存類似製品に同レベルまでリスクを下げる「GAMAB原則」などが参考になるだろうと述べた。「可動ベッドと電動車いすが合体したリショーネならばGAMAB原則に沿って、可動ベッドと電動車いすと同等までレベルまでリスクを下げるという考え方ができる」(木村氏)


 ここ1年ほどの間に取得事例が相次ぎ、話題となっているISO 13482だが、サービスロボットの市販化に際しての法的な取得義務はない。

 現在は“第三者による安全性検証を経ています”というアピールにすぎないという見方もできるが、ISO 13482には具体的な安全設計手順の明示がないため、取得に際して安全性確保へどのように着手しているかを明確にしなければならない。木村氏はその明確化の中で安全性のコンセプトが確立することは大きなメリットの1つだと話す。

自動車を例にした規格・認証・保険によるリスクマネジメント社会 自動車を例にした規格・認証・保険によるリスクマネジメント社会

 加えて木村氏は時として凶器ともなり得るが利用者のメリットも大きな自動車を例に「ISO 13482の取得を考える際にはリスクマネジメントの“検証”だけではなく、“枠組み”と“原則”までも考えることが大切。サービスロボットにおいても、規格/認証/保険が一体化したリスクマネジメント構造の実現を期待したい」と期待を述べた。

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