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» 2015年10月22日 10時00分 UPDATE

クルマから見るデザインの真価(7):ダイハツ「キャスト」は「テリオスキッド」や「ミラジーノ」の後継とは限らない (1/5)

3つのモデルを同時開発したというダイハツ工業の「キャスト」。それらのうち「アクティバ」は「テリオスキッド」、「スタイル」は「ミラジーノ」の後継と言われることもある。しかし、同社のデザイン担当者の考え方を聞くと、必ずしもそうではないようだ。

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]

 軽自動車のカタチにおいて、普通車のミニバンを小さくしたような背が高いスタイルのクルマが“普通”となって随分と時間がたつ。軽自動車枠という制限寸法の中で少しでも広い空間に4人の乗員を乗せようという方向を求めていくと、各社似たようなシルエットのモデルがそろうのは当然の流れの結果であろう。

 似たようなモノが溢れてくると、ちょっと人とは違うものがあってもいいんじゃないの? と思うのは、作り手側にも買う側にも出てくる訳で、スズキからは「ハスラー」が2014年1月に、ダイハツ工業(以下、ダイハツ)からは「キャスト」が2015年9月に発売されている。今回、ダイハツ・キャストのメディア向け試乗会に呼んでいただいたので、クルマに試乗しつつ同社デザイン部課長の芝垣登志男氏に話を伺った。

ダイハツ「キャスト」の「スタイル」(左)と「アクティバ」 ダイハツ「キャスト」の「スタイル」(左)と「アクティバ」(クリックで拡大)

3つのバリエーションモデルを同時に作る理由

 キャストは「ムーヴ」のプラットフォームを使った派生車だ。ムーヴのように広さや使い勝手ではない部分を訴求ポイントとすべく企画された。ダイハツの説明によると、「デザインを重視する」「人と違う個性的なクルマに乗りたい」という層は増えてきているという。

軽自動車に対する顧客の需要 軽自動車に対する顧客の需要(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 軽自動車全体の市場では、消費税と軽自動車税増税の影響もあるのだろう、2015年の4〜9月の軽自動車販売台数は前年度同期比16.2%減で、2年度連続のマイナスとなっている(全国軽自動車協会連合会発表資料より)。また加えて、今や軽自動車の競合は必ずしも軽自動車とは限らなくなってきている。軽自動車といえども、安全装備や快適装備は普通車と同じレベルのものが求められる訳だから、小型車と較べて大幅に低価格で販売できるマジックはなく、車両価格で比較すると今回のキャストとマツダ「デミオ」に驚くほどの大きな差はない。

 こういったさまざまな要素から、キャストの月間販売目標も、ムーヴやスズキ「ワゴンR」といったメインストリーム車のような1万数千台は求めず、5000台あたりにおいた。このことが、少し個性的な派生車が生まれる背景となっている。

 キャストで興味深いのは3つのモデルを同時に開発し発表したところだ。

 クロスオーバーテイストの「アクティバ」、上質感の訴求にフォーカスした「スタイル」、走りのフィーリングを訴求した「スポーツ」がその3モデルとなる。最初キャストについてほぼ事前知識が無く、試乗会場への道すがら同行の担当編集から「アクティバは『テリオスキッド』、スタイルは『ミラジーノ』の後継車という感じでしょうか」と言われて、なるほどと思いながら向かったのだが、必ずしもそうではないようだ。

「テリオスキッド」の外観「ミラジーノ」の外観 「テリオスキッド」(左)と「ミラジーノ」の外観(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 ダイハツ・デザインの芝垣氏によると、ユーザー像としてある1人の「キャストさん」をイメージし、1人のさまざまなライフタイルシーンごとに合うクルマをイメージした時に、この3つの切り口が出てきたそうだ。同じ1人の人物でも、レストランに食事に行く、旅行に行く、スポーツするといったように、ライフスタイルでのシーンごとに、必要となる服装や靴は違ってくるというような視点で、クルマのありようを考えてみたというわけだ。

 では、その「キャストさん」とはどんな人? と問うと、次のようなキーワードが提示された。

 「軽自動車といえどもちょっといいものを求める人」「いい物を知っている人」「でもレクサスみたいな軽自動車を求めている訳ではない」……etc.。芝垣氏の言葉からもう少しイメージを膨らますと、暮らしの中に上質さや拘りを求める人、加えて自分にとっての「上質さ」について、むやみにブランドを信頼するのではなく、自分の目で判断する人、自分のライフスタイルの中に置くべきグッズかどうかよく吟味する人、といったあたりか。

 これまでのダイハツ顧客層とは違うタイプで、これから取り込みたい顧客層であるという。

ダイハツ工業の芝垣登志男氏(左)と筆者の林田浩一氏(右) ダイハツ工業の芝垣登志男氏(左)と筆者の林田浩一氏(右)
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