統計の食わず嫌いを直そう(その7)、「鎌倉時代の平均ワイン消費量」と「平均値の検定」山浦恒央の“くみこみ”な話(79)(3/3 ページ)

» 2015年10月29日 07時00分 公開
前のページへ 1|2|3       

4.検定とは

 統計アレルギーの私は、「検定」という言葉だけで拒絶反応を起こしていました。大学院生のデータの分析法を見ると「平均」「標準偏差」「場合の数・確率」はすらすらできても、「推定・検定」に移った途端、死んだふりをします。

 見たこともない複雑怪奇な数式のボディブローを10連発で食らって統計アレルギーとなり、勉強するモチベーションがマイナスになったと思われます。複雑な式は見かけだけで、決して難しくはありません。簡単に言うと、検定とは、自分の立てた仮説が本当に正しいかを統計的に確認する手法です。

5.平均の差の検定

 プロセス改善の成果があったかどうかをチェックする最も簡単な方法は、全データから「新プロセス適用前」と「適用後」の2つのグループを作り、グループ間の母集団の平均に差があるかを確認する手法です。つまり、プロセス改善を実施し、差があると統計的に言えれば「効果あり」ですし、差が無ければ「効果無し」と断定できます。図.1に具体的な手順を示します。

検定手順 図.1 検定手順

 図.1に検定を行う手順を示しました。検定を行う手順は、検証したい仮説を設定し、統計式に必要なデータを整理します。次に、両者のデータの差があるかを確認するために使用する検定量、有意水準を算出し、そこから仮説が確かかを判定します。「検定量」や「有意水準」という、初めて聞く三文字熟語、四文字熟語が出てきましたが、心配いりません。難しいのは字面だけです。豊富な例を使い、次号で解説します。

【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科助教授、現在に至る。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.