3Dプリンタは製造装置の一角へ、生産プロセス変革を巻き起こす積層造形技術次世代生産技術(1/3 ページ)

ドイツ貿易・投資振興機関は今回で11回目となる「日独産業フォーラム 2015」を開催。今回は注目を集めるインダストリー4.0を背景としつつ、テーマを「次世代生産技術」とし、3Dプリンタを中心とした積層造形技術による製造プロセスの変化などについて紹介した。本稿では、ドイツのフラウンホーファーIWU(工作機械・成形技術研究所)所長のヴェルフーグントラム・ドロッセル氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。

» 2015年11月11日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ドイツ貿易・投資振興機関は2015年11月10日、今回が11回目となる「日独産業フォーラム 2015」を都内で開催した。同フォーラムでは毎回ドイツと日本の産業にとって関心の高いテーマ設定を行っている。2014年はインダストリー4.0をテーマとしたが、「インダストリー4.0は定着が進んでおり、今回はより具体的に製造技術そのものに踏み込んだ」(ドイツ貿易・投資振興機関 日本代表 浅川石見氏)という。テーマは「ドイツにおける次世代生産技術」とし、主に3Dプリンタを含む積層造形技術の最前線を紹介した。本稿では、基調講演を行ったドイツのフラウンホーファーIWU(工作機械・成形技術研究所)所長のヴェルフーグントラム・ドロッセル(Welf-Guntram Drossel)氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。

デジタル化で変わる製造プロセス

photo フラウンホーファーIWU所長のヴェルフーグントラム・ドロッセル氏

 ドイツのフラウンホーファー研究所は、さまざまな領域に高い知見を持つ研究機関で、ドイツ連邦政府などから委託研究などを受けている。ドロッセル氏はその中で、主に工作機械や成形技術などを担当する。3Dプリンタを含む積層造形技術などにも高い知見を持っている。

 同氏は次世代の製造技術について「バリューチェーンの中心にデジタル化が加わる。デジタル化により、製造プロセスは、分散化され、柔軟で効率的な生産体制が築けるようになる」と述べる。

 これらの新たな製造の世界で大きな役割を持つようになるのが、3Dプリンタをはじめとする積層造形技術である。同氏は「積層造形技術があれば、CADなどのデジタルデータからそのまま造形が可能になる。デジタルから直接リアルにアイデアを反映できるということだ」と積層造形技術の価値を訴える。

photo 次世代の製造の姿(クリックで拡大)出典:フラウンホーファーIWU

 さらに、次世代の製造方式に積層造形技術を当てはめた時に従来の射出成型機などによる大量生産方式と比べ「個別性(カスタマイゼーション)と、複雑性への対応力が従来に比べてはるかに高まる。カスタム製品や複雑な製品でも十分なコスト対応力を実現できる」(同氏)と積層造形の価値を訴える。

photo 積層造形技術のコストメリットを発揮できる領域(クリックで拡大)出典:フラウンホーファーIWU

 「積層造形技術は現在は2020年に70億ユーロ程度の小さな市場だが、ほとんどの製造業や製造プロセスに影響を与えることになり、サービスや材料、機器など幅広い領域で大きなインパクトを生み出すだろう。生み出される製品など経済効果全体で考えた場合、2020年で500〜1000億ユーロ、2025年には1000〜2500億ユーロの経済効果を生み出す」と同氏は述べている。

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