世界最大のソーラーカーレースで最速タイムも準優勝に、工学院大学はなぜ敗れたモータースポーツ(2/3 ページ)

» 2015年11月12日 07時00分 公開
[日沼諭史MONOist]

スピード優先の作戦で間違いなく優勝できると踏んだ

チームのキャプテンを務めた工学院大学 機械工学専攻修士2年 大原聡晃さん チームのキャプテンを務めた工学院大学 機械工学専攻修士2年 大原聡晃さん

 こうした中で、オランダのEindhovenが97.27点で優勝、工学院大学は3.66ポイントの差となる93.61点で惜しくも準優勝となった。なお、3位は82.91点、4位は72.91点と大きく差が開いており、いかにオランダチームと工学院大学が能力的に抜きん出ていたかが分かるだろう。ただ、全員がベストを尽くし、ほとんどミスなく走りきったうえでの準優勝だったとはいえ、報告会でマイクを握ったチームキャプテン 機械工学専攻修士2年の大原さんの口調と表情には悔しさがにじみ出ていた。

 2014年に決定していたレギュレーションを元に、工学院大学は配点割合の低い「搭乗者数」の項目については2人搭乗を諦め、効率重視で1人搭乗にして減点を覚悟、徹底的にスピードにこだわる戦略を採った。他チームの走行速度がかなり高い確度でせいぜい時速70〜80km程度であると推測できたことからも、時速90〜100kmで巡航できる工学院大学のマシン「OWL(アウル)」なら、スピード優先の作戦で間違いなく優勝できると踏んだ。

 しかし誤算は意外なところにあった。ダーウィンから中間地点のアリススプリングスまでの3日間が大会前半となるステージ1、そこからゴールのアデレードまでの3日間が大会後半となるステージ2と、2ステージ制で争われた今大会だが、そもそも2ステージ制になると通知があったのが大会スタート2日前の10月16日。2ステージ制がどのような扱いでどのように採点されるのかが明らかでないまま、大会は始まった。

 さらに「実用点」については、坂道発進や縦列駐車、Uターン、5分以内の荷物積載という、運転技量などを確認するような内容が実施されたが、採点基準や得点配分が不明で、審査員も電気自動車メーカー・Tesla Motor(テスラ)の社員やテレビアナウンサーなど、ソーラーカーに精通しているとは思えない人選であったことも工学院大学のメンバーが疑念を感じる部分だったとしている。

 それでも同チームは初日の22番手スタートから一気に13チームをごぼう抜きし、ステージ1はクルーザークラスでトップ順位でゴールし、戦略通りに速さを見せつける。ステージ2でも時速100kmで2位以下との差を広げる作戦だったが、ここでオフィシャルから突然ペナルティを宣告され、時速70km以下での走行に制限されることになった。

 ペナルティ要因は車体のふらつき(車体の不具合)だったようだが、レギュレーションでふらつきに関する規定はなく、結局その後ふらつき(不具合)は確認されないとして翌日、スタートから5日目にはペナルティが解除された。しかしながら、トータルで5時間に渡って低速走行と停車を強いられ、その時点で2位だったオランダチームとの差がわずか1分にまで迫った。

 ペナルティ解除後は法定速度ギリギリとなる時速110kmで飛ばし、2位との差を広げてステージ2もトップでゴールを果たした。ステージ1では44分、Stage2では48分もの差を2位以下につけ、圧倒的な速さでのゴールだったが、ペナルティのおかげでスピードで突き放す戦略を生かすことができず、採点基準の不明な実用点でも減点が大きく、結果Eindhovenに次ぐ準優勝となった。

ステージ1、ステージ2ともに1位でゴール ステージ1、ステージ2ともに1位でゴール(クリックで拡大) 出典:工学院大学
完走した5チームの得点と比較 完走した5チームの得点と比較(クリックで拡大) 出典:工学院大学
優勝したオランダチームEindhovenとの比較 優勝したオランダチームEindhovenとの比較。実用点においては、Eindhovenでは車内で音楽を楽しんだりナビシステムを搭載するといったユーティリティ面を、工学院大学のアウルは非常用電源としても使えることをアピール(クリックで拡大) 出典:工学院大学

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