マグロのPOPが空を泳ぐ、ロボット開発に求められる「システムインテグレーション」

ニーズ駆動の基礎研究はロボット開発にも求められる要素であり、同時に、ロボット開発には関連する諸要素を統合する力も求められる。産官学連携と統合力を持った人材育成に尽力する立命館大学の川村教授がその取り組みを語った。

» 2015年11月27日 18時17分 公開
[渡邊宏MONOist]

 立命館大学が1994年に開設した「ロボティクス研究センター」は1994年の設立から産官学連携を積極的に推進しており、純粋な研究機関と言うより、「ニーズ駆動の基礎研究を重視している」という川村貞夫 センター長(同学 理工学部教授 ロボティクス研究センター センター長)の発言の通り、純粋な研究機関というより、大学のシーズを市場のニーズに変換する機関という色彩も強く持つ。

photo 理工学部教授 ロボティクス研究センター センター長の川村貞夫氏

 そのため「ロボティクス」を名乗る研究センターであるが、研究範囲はいわゆるロボットだけにとどまらない。生産や医療福祉、生活支援、極限作業など幅広い分野に及ぶ研究を行っており、既に心電図センサー搭載マッサージチェアや高精度・低価格な油圧/空気圧サーボ、3次元センサーなどの製品が製品化もしくはベンチャーによる製品化準備に入っている。また「“チーム対応の速さ”には自信がある」と川村氏が述べるよう、ニーズの対応に研究室単位ではなく、センターとして横断的に対応するのも特徴としている。

 川村教授は活躍の場を広げるロボットの開発について、機械や電気、情報、制御、材料、環境などさまざまな分野の知識が必要であり、既存要素のシステム的な統合(System Integration)を行える人材こそがロボット開発に必要だと述べる。同学ではロボティクス研究センター設立の2年後、1996年にロボティクス学科を設立、これまでに1400人余りの卒業生を輩出しており、DJI Japan 代表取締役のWu Tao氏も卒業生だ。

 センターとの産学連携に参加している、店頭POPなどを手掛けるワヨーの亀岡勇人氏は、「インフレータブルPOP(ビニールなどで作られる店頭販促用の立体POP)にロボット技術を入れれば動くPOPとなって、意識付け以上のアクションを促すことができるかもしれない」と、産学連携のロボティクス技術による新たな価値創造を期待する。

マグロのインフレータブルPOP マグロのインフレータブルPOPがロボット化によって“空中を泳ぐ”日も近い?

 2015年12月2日より開催される「2015 国際ロボット展」にも、同学はこうしたニーズ駆動に基づくロボットを多数展示する。水洗いが必要な作業に利用できる柔らか素材のロボットアームや弁当のおかず入れを行えるバインディングハンド、ヒューマノイドロボットに不足しているといわれる“腕力”を油圧で解決する取り組みなどが紹介される予定だ。

プラスチック材料によるロボットアーム。軽量化はもちろん柔らかい素材を利用しているので、人と近接作業をする際の危険防止にもつながる

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