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» 2015年12月24日 10時00分 UPDATE

3D設計推進者の眼(5):部品加工と設計者と3D CAD (1/3)

機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は部品加工の際の見積もりや3D CADについて語る。

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]

 前回は、TPD(Total Product Design:全社製品開発)において、3Dデータを社内一気通貫のためのデータとして活用することについて話をしました。今回は、その際に触れなかった部分について補足をした後に、3Dデータの源泉となる3D CADについて触れていきます。

近頃、資材や町工場との対話が減ったかな

 日本の製造業では、一部の先進企業で加工部門におけるCAD/CAM連携が行われています。しかし実際、多くの企業ではその実現に至っておらず、取り組み始めた段階であるか、汎用機を使用する加工の一部の廃業を検討しているといった状況ではないかと思います。少なくとも、私ども個別受注生産型の現場や、中小企業の多くは、今でも2次元図面や紙図面に基づいた加工が主流です。

 言うまでもなく、モノを作る上で必須なのが部品加工です。装置設計においてユニット単位での詳細設計を進めた後、部品図に展開され、多くは2次元図面として社内の加工部門や、外部の加工会社(町工場)に渡ります。

 出図された図面は、加工部門に手渡される前に資材調達部門がチェックします。私が設計の新人だった頃、資材部門が材料代、加工賃(切削・表面処理)、場合によっては工具費用を積算した上で、材料単価の見積もりをすることがありました。装置原価見積もり(予算)における加工部品代の割り当てに従って、部品単価の妥当性とそのコストダウンを図る作業は資材部門にとって重要な任務でした。

 これらの作業は2次元図面と帳票によって行われました。時には設計者である私が資材部門に呼び出され、その図面に対する協議をすることもありました。そこでは、「何でこの材料を選定したのか?」「何でこの加工精度を求めるのか?」「この穴の深さは一般工具では加工できないがどうするのか?」「この表面処理は何で必要なのか?」といった質問を資材担当から受けました。

 根拠があれば良いのですが、当時、設計者として未熟だった私にとっては、「参考にした図面がそうなっていたためです」「工具のことを考えずに設計しました」「加工方法や加工手順、加工機の能力も考えずに設計しました」と答えるしかないこともありました。そうなると、協議はお説教へと変わっていきました。今思い返すと、当時の私にとって非常に良い経験だったと思います。

 また当時は外部の加工会社との協議が多くありました。外部の加工会社の方々は、2次元図面のみが情報源なので、部品の機能自体は知りません。当時の設計者は、加工のプロである加工会社の方々と図面中の加工精度や加工方法について話をしたり、場合によっては加工現場を訪ねたりすることもありました。それが「設計上の部品の品質」と「実物の部品の品質」を向上させるため、あるいは業務を最適化する上で効果的だったと私は考えています。それが設計者のスキルを上げるためにも一役買っていたことも事実です。

 部品表システムをベースにした生産管理システムの充実によって、資材業務も様変わりしています。設計が出すE-BOM(Engineering Bill of Material)をベースにさまざまなBOMの作成が、システマチックに可能となりました。BOMの中では、材料・加工・処理や、購入部品購入・追加加工などといった工程管理も可能になりました。結果、実績管理(実績)が上手くできるようになったことで、手作業による積算見積もりではなく、実績原価ベースによる見積もりが可能になりました。しかし、それと併せて出図から発注までのスピードや合理化などが要求されるようになったことで、資材担当との会話が以前より減ってしまったように思っています。

 設計者は加工サイドからもっと“ものを申して”もらうべきであって、同じ土俵の上でもっと“せめぎ合い”を行うべきでしょう。

 加工に精通していた資材担当や外部加工会社との協議は、加工部門とのレビュー(加工レビュー)であって、「コストレビュー(CR)」の一種とも言えます。またコストレビューや加工レビューは、技術的な要素として「部品形状」「加工方法」「加工精度」をポイントにして実施されるべきです。これらを実施する1つの手法としては、公差設計・公差解析があります。

 また装置組み立てに関するものを「製造レビュー(PR)」とするのであれば、資材担当部門だけではなく部品加工部門や、外部の加工会社とのレビューも設けられるべきかもしれません。

 3Dデータとして画面に表示された部品は見栄えが良く、しかも小さなモニター上で縮小されて見えるためか、“良い部品”に見えてしまいます。それは3D CAD化による弊害の1つだと思います。部品情報をいかに正確に資材部門、加工部門、外部加工会社と共有し、精査できるか。そのような仕組みを作りあげることも3D設計推進の際の課題となります。

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