日産自動車は10年前から予見していた、電気自動車と自動運転車のトレンドSEMICON Japan 2015 講演レポート(1/3 ページ)

日産自動車 フェローの久村春芳氏が、半導体製造技術の国際展示会「SEMICON Japan 2015」で講演。同社は、COP21の合意により需要の拡大が見込まれる電気自動車や、自動車業界の内外で開発が加速する自動運転車のトレンドについて、2005年の時点で予見していたという。

» 2016年01月08日 09時00分 公開
[日沼諭史MONOist]

 東京ビッグサイトで、2015年12月16〜18日に開催された半導体製造技術の国際展示会「SEMICON Japan 2015」。2日目の12月17日には「Smart Life&Smart Car フォーラム『IoTで進化する暮らしとくるま』」と題したセミナーが行われた。同講演では、日産自動車、ルネサス エレクトロニクス、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の3社が自動運転などに関わる取り組みについて解説した。

 本稿では、日産自動車の講演を中心にセミナーの内容を紹介する。

「21世紀末には全てのクルマを電気自動車に」

日産自動車の久村春芳氏 日産自動車の久村春芳氏

 日産自動車のフェローである久村春芳氏は、同社の電気自動車と自動運転車の取り組みについて報告した。最初に久村氏は、各国のGDP分布とその国民の移動距離をグラフにしたものを示し、特に先進国でGDPの上昇に合わせて移動距離が多くなること、GDPの低い新興国では移動距離が少ないことを紹介した。つまり「お金持ちになると移動したくなる」(同氏)ことが理解できるデータだ。

 しかし、最もGDPが高く移動距離も多い米国の最近の動きを見ると、2004年以降はGDPが上昇しているにもかかわらず、移動距離は変わらないか、むしろ減っている傾向にある。日本も似たような状況にあるが、久村氏によれば、「AmazonやeBayのようなネット通販サイトが、不要な移動を減らしているとも考えられる」としている。

 このような一見無関係とも思える自動車以外の市場の動きが自動車業界に影響を及ぼす可能性を示唆した格好だが、それに加えて一般的には、「地球温暖化」「エネルギー」「交通事故」「交通渋滞」という4つの要素が現在の自動車業界で大きな課題となっていると久村氏は述べる。

 とりわけ温暖化の問題に関しては、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、同年12月12日に採択された「パリ協定」において、21世紀末までに世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロに抑えるという目標が掲げられる新しい動きがあった。久村氏はこれについて、自動車のCO2排出量も限りなくゼロに近づけることを意味すると指摘。すなわち「全てのクルマを電気自動車にしなければならない」と同氏は見ており、エネルギー問題や事故/渋滞の解消も合わせて考慮すると、日産は電気自動車と、より賢いクルマを作ることにフォーカスしていくことになると述べた。

 ここで同氏は、今から10年前、2005年の状況を回想する。同氏が当時の日産リサーチ・センター在籍時、10〜15年後(2015〜2020年)を見据えて「自動車に新しい価値を」と提案したドキュメントを示したが、そこには「Connected」「Getting-younger」「Eco-friendly」というワードが並んでいる。ここでいうConnectedはクルマの自動運転や車車間通信を、Getting-youngerは高齢化社会を見越した運転支援の必要性を、Eco-friendlyは環境にやさしい電気自動車をそれぞれ表すものだった。これらを実現するコンセプトが「電動化」と「知能化」だということを、当時から既に認識していたわけだ。

 これを受けて2007年に同社が東京モーターショーで披露したのが電気自動車のコンセプトカー「PIVO 2」であり、2010年に発表した電気自動車のリーフだった。リーフは、排ガスゼロ、低い燃料コスト、災害に対する強さ(ガソリン車に比べて爆発/炎上しにくく、エネルギーとなる電気を確保しやすい)といった点が受け、発売後から順調にセールスを伸ばしている。2015年8月時点で累計18万9000台を販売しており、2016年1月には20万台を突破する予定だという。2005年に久村氏が提案していた通り、同社のEVへの取り組みは着実に進んでいるといえる。

「東京モーターショー2007」で公開した「PIVO 2」2010年に発売した電気自動車「リーフ」 「東京モーターショー2007」で公開した「PIVO 2」(左)と2010年に発売した電気自動車「リーフ」(右)(クリックで拡大) 出典:日産自動車
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