2016年のCESで自動車メーカーが示唆した「自動車産業の構造転換」2016 CES&デトロイトモーターショー2016レポート(前編)(2/4 ページ)

» 2016年01月20日 11時00分 公開
[桃田健史MONOist]

謎のEVベンチャー「ファラデー・フューチャー」がついに表舞台へ

 プレビューの後、一部のメディアは、マンダレイベイホテルの斜め向かいの屋外特設テントに向かった。謎の電気自動車(EV)ベンチャーである「Faraday Future(ファラデー・フューチャー)」による世界初の記者会見が催されたのだ。

 会場内は、報道陣やファラデーの関係者が300人以上詰めかけて熱気ムンムン。最前列には、中国人がズラリと並んだ。

 広報担当者の女性がオープニングのコメントをした後、開発担当の筆頭副社長であるニック・サンプソン氏が登壇した。サンプソン氏は、Tesla Motors(テスラ)の「モデルS」および「モデルX」の開発責任者で、車両開発の実績がなかったテスラに対して、かつて「Range Rover(レンジローバー)」で培ったエアサスペンションの開発技術などを持ち込んだ人物だ。

 サンプソン氏は、ファラデーの特徴について、「各分野の専門家が集結し、車両設計において可変的な思想を持ち、豊富な企業アライアンスを行い、そして企業の設立からわずか18カ月で750人規模の優秀なスタッフがそろった。こうした“テスラより速い”スピード感あふれる企業精神によって、開発から製造/販売までの期間もかなり速くできる」と強気の姿勢を見せた。

 車両の最終組み立て工場の敷地をラスベガス北部に確保しており、「近年中に生産を開始する」という。同工場の建設に対して、ネバダ州は総額400億円の補助金を投じることを決定している。また、企業アライアンスについて、中国の家電メーカーの「Letv」を「パートナー」と呼んだ。

 なお、ファラデーの本社は現在、ロサンゼルス近郊のガーデナ市内にあり、入居する建物は北米日産が以前に本社施設として使用していた場所だ。

 続いて技術的な説明に移った。車体については「ヴァリアブル・プラットフォーム・アーキテクチャ(VPA)」と呼び、車体の下部に二次電池のパッケージを敷き、電池容量によって電池パックの大きさが変化することで、ホイールベースを調整する。また、モーターについては、車体の前部、後部、または前部/後部の両方に配置することで、「FR/RR/AWDなど、どのような駆動方式にも対応可能だ」(サンプソン氏)という。さらに同氏は「コネクテッドカーとしての対応と、自動運転に関しても準備している」と付け加えた。

 そして、ついに壇上の車両がアンベールされた。すると、そこにあったのは、ル・マンなどの耐久レース用競技車を連想させる、単座席のスーパーカー「FF ZERO1」だった。

ファラデー・フューチャーの電気自動車コンセプトカー「FF ZERO1」 ファラデー・フューチャーの電気自動車コンセプトカー「FF ZERO1」(クリックで拡大)

 会見後の記者団の質問に対してサンプソン氏は、「これは、あくまでもコンセプトモデルだ。量産車では、セダン、SUV、クーペなど、さまざまなモデルバリエーションを考えている」と自信満々だ。一方で、中国企業であるLetvとの関係については、「電池やモーターをLetvから調達するわけではない」「Letvは弊社のオーナーや投資家ではなく、あくまでもパートナーだ」とし、明確な回答を避けた。

 米国メディアの中には「ファラデーはApple(アップル)の黒子ではないか」といううわさも飛び交っている。CESでの発表を終えた現在も、その実態はまだよく見えてこない。

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