10年で10事業から撤退、イノベーションに活路を見いだすコニカミノルタの挑戦イノベーションのレシピ(1/3 ページ)

日系製造業は事業環境の変化に悩まされ続けている。その中で新たなビジネスの芽を生み出し続けることは非常に重要な課題である。「10年で10事業から撤退した」というコニカミノルタでは、ロジックでイノベーションを生み出すため、組織的な取り組みに力を注ぐ。

» 2016年02月04日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 グローバル競争の加速や、異業種参入などのボーダーレス化、ビジネスサイクルの短縮化など、日系製造業を取り巻く事業環境は、土台をゆるがすような変化の波にさらされ続けている。これらの変化の波に俊敏に対応し既存事業が勝ち残れるように取り組むことは当然だが、時代に合わなくなった事業は撤退せざるを得ない。こうした環境で企業として成長を続けていくには新規事業を生み出し続けるということは従来以上に重要なテーマとなっている。

 新規事業や新たな技術や新たな市場などから生まれる。いわゆる“イノベーション”を生み出すということだ。しかし、従来日本企業はイノベーションは「優れた個人によって生み出される」という認識が強く、組織としてイノベーションを生み出す取り組みが弱かった(関連記事:“革新”を「天才が生む」と考える日本、「組織で生み出す」と考える世界)。ただ、個人に頼った革新は、機会も限られ、継続的に生み出すことができないという課題を抱えている。こうした中で日本企業の中でも、組織的にイノベーションを生み出すためにどうすべきかという取り組みが広がりつつある。その1社がコニカミノルタである。

10年で10事業から撤退、新規事業創出が死活問題へ

photo コニカミノルタ 取締役 常務執行役で事業開発本部長の腰塚國博氏

 コニカミノルタは2003年にコニカとミノルタが統合して誕生した。しかし、2006年にはコニカの創業事業であるフィルム事業(フォト事業)、ミノルタの創業事業であるカメラ事業からの撤退を発表。その他にも「誕生から10年で10事業から撤退してきた。ほぼ1年に1事業のペースで事業撤退を重ねているという状況だ」とコニカミノルタ 取締役 常務執行役で事業開発本部長の腰塚國博氏は述べる。

 また主力の既存事業そのものも成熟化が進んでおり、延長線上での大きな成長は見込めない状況だ。そのため「新規事業創出は、企業としての生き残りをかけた重要な勝負のポイントになっている。最低でも1年で1事業ずつ生み出していけるような“建付け”が必要だ」と腰塚氏は語る。

 ただ、「新規事業を継続的に生み出す」には組織として取り組むバックボーンとロジックが必要になる。同社では新規事業の1つのポイントとして「コア技術を新規事業の差別化のポイントとし、需要に的確に翻訳すること」を挙げる。従来の事業の中で磨き上げてきた技術資産を体系化し、これらを核に周辺領域などで新たな需要を創出できないかというのを探る形である。

 コニカミノルタでは、コア技術として「材料」「光学」「微細加工」「画像」の4分野を挙げており、これらに付随する技術として「機能性有機材料設計」や「製膜コーティング技術」「光学設計技術」「画像処理技術」などさまざまな技術が存在している(図1)。

photo 図1 コニカミノルタのコア技術 出典:コニカミノルタ

 これらのコア技術の周辺や間の領域に新たな技術や価値を生み出せないかと同社が作成したのが「技術相関曼荼羅(まんだら)」である。

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