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» 2016年02月17日 10時00分 UPDATE

基板設計の現場の声から生まれた:第23回 基板の熱解析をリアルタイムで表示――「PICLS」の開発背景

解析の専門家ではない基板設計者でも簡単に扱える熱解析ソフトとして開発されたPICLS。2次元操作で、簡単かつ高速に熱解析を行えることを意識して設計されたため、解析モデルの設定を行うプリプロセッサと解析結果を表示するポストプロセッサが一体となっている。「基板設計者が熱設計アイデアを、ストレスなく、その場で試せるようなソフトウェアがあれば、設計現場に大きなメリットをもたらすことができる」。そう考え発案に至ったというソフトウェアクレイドル 技術部の衛藤潤氏に、開発背景について聞いた。

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PICLSロゴ PICLSロゴ

――開発の背景を聞かせてください。なぜ基板の熱解析に特化したのでしょうか?

 昨今、電気・電子機器関連のお客様にお話をお伺いするなかで、密閉化や小型化など熱的に厳しい要求仕様が増えています。そして、それに伴い、機構レベルだけではなく基板レベルで熱設計を行う必要性が急速に高まっていると感じています。主に機構レベルの熱流体解析で利用されているSTREAMや熱設計PACにおいては、これまでも基板のモデリング機能のニーズは非常に高く、配線パターンの占有率による等価熱伝導率算出機能やガーバーデータのインポート機能を実装してきました。

 その一方で、基板設計者が熱流体シミュレーションを行う場合、STREAMや熱設計PACでは計算機能は満たしていても、運用するにはハードルが高いという声がありました。主な理由としては、「熱流体解析に詳しくないと手が出しづらい」「基板設計者にとって3Dの操作は抵抗がある」「もっと早く答えが欲しい」といったものでした。そこで私たちは、『基板設計者の熱設計』に焦点をあて、どのようなソフトウェアなら設計現場において役立つツールとなるのか、率直なご意見をお客様からお伺いすることにしたのです。

 そうして検討を重ねるなかで、徐々に分かってきたことがありました。それは、「モデル作成が容易であること」「解析結果の処理がスムーズに行えること」「リアルタイムで熱移動の様子や温度分布の変化が確認できること」。これら全てが実現されて、はじめて基板設計の現場において役立つ実用的なツールとして認識してもらえるということでした。

図1 PICLSの操作画面 図1 PICLSの操作画面

 特に現場の基板設計者から多く寄せられた声は、「部品を移動させることで、部品温度は下がると思うのだが、それは何度ぐらいなのか」というものだったのです。そうした熱設計のアイデアを、いかに気軽に試すことができるかどうかが、開発に当たってのコンセプトとなりました。

 開発にあたっては、ソフトウェアクレイドルが30年以上培ってきた様々なノウハウや技術力を集結させることで、「2次元操作による簡単なモデル作成」「ストレスのないスムーズな結果表示」「設計アイデアを一瞬で計算するリアルタイム計算」を実現することが出来ました。

――PICLSを使って検討できることは何か?

photo ソフトウェアクレイドル 技術部 技術二課 衛藤潤氏

 皆さんは、おそらくフロントローディングという言葉を一度は耳にしたことがあると思います。製品構想段階や設計初期段階において、熱設計をしっかりと検討して自由度の高いうちに理論立てて設計をしていこうという思想です。さまざまな方面でうたわれていますが、実際の現場においてはなかなか定着していないのが事実だと思います。

 多くの場合、基板設計者は熱にあおられた部品をどのように配置変更すればよいのか、設計改良のためのアイデアは持ち得ているものです。しかしながら、これらのアイデアの妥当性は、これまでの経験や勘に頼るか、CAE担当者にシミュレーションを依頼することでしか、確認することが出来ませんでした。こういった背景にフロントローディングが定着しない原因があると考えられています。そこで私たちは、そのための解決策として、基板設計者でも気軽に簡単に操作ができ、リアルタイムで結果表示をするツールが必要であるという結論に至りました。

 PICLSを使うことで、基板レイアウトを考える際に、できるだけ熱干渉が少なくなるような部品配置の検討をすることができます。部品同士が離れれば温度が下がることは、簡単に想像がつきますが、それだけではなく具体的に何mm離れれば何度下がるのかを数値で確認することが可能です。

 また、見落としがちな部品面とはんだ面に配置された部品同士の熱干渉のチェックも行うことができ、事前に熱的に危険なレイアウトを防止する手段になります。

 サーマルビアは部品温度を下げる技術として広く使用されていますが、具体的にどの程度打てばどのくらい温度が下がるのかをイメージすることは難しいのではないかと思います。PICLSではサーマルビアの本数や径、配置を自由に設定できるため、どこにどれだけ配置すれば温度が何度下がるのかを確認することができます。

 また、これはどのような解析にも共通のことですが、検討結果を可視化することで、設計者間で情報を共有できることが大きなメリットと考えています。特に設計の上流段階から情報共有することができるため、熱問題をいち早く察知することが可能になります。

――開発に当たり苦労や工夫したポイントなどがあればお聞かせください。

 とにかく基板設計者が自らPICLSを活用して熱問題に設計の初期段階から対策を講じることができるように、何度も設計現場からの声を収集しました。

 また、精度検証の段階においては、お客様に協力してもらい、実際に基板を設計・製造・測定してもらい徹底的に実測とシミュレーションの結果を比較し改良を加えました。さらに、私たちも設計現場を体験させてもらうことで、「プリント基板とは?」から、「配線入力の仕方」、「部品実装状態」に至るまで広く知ることで、どのような熱解析ソフトウェアであれば幅広いユーザー様に使っていただけるのか、イメージを膨らませていきました。

 開発当初から、社内で仕様の検討をする際には、熱解析に特化したソフトウェアを開発するために、既存製品にあるSTREAMや熱設計PACの良い所をシンプルに引き継ぎながら、今後の拡張性も意識することを心掛けていましたが、「シンプルにしていくこと」と「拡張性をもたせること」は相反する概念でもあるため、それらを両立させることに苦労しました。また、「熱流体解析ソフトウェアから流体解析を引き算」といった安易な要件定義ではなく、本当に役に立つ新感覚の熱解析ソフトウェアをゼロから創り出す、そういった意気込みでプロジェクトに挑みました。

図2 PICLSでのモデル作成 図2 PICLSでのモデル作成
図3 解析結果表示 図3 解析結果表示

 PICLSの開発に携わる以前は、STREAMや熱設計PACのユーザー様向けにカスタマイズという形で、VBAを用いた自動処理熱解析システムなど、できるだけ簡単に熱流体シミュレーションが出来るようなシステムを個別に開発してきましたが、基板設計者が熱解析に慣れ親しむためには、やはり直感的でストレスなく、かつリアルタイム性のあるソフトウェアこそが最適なのではないか、その思いは捨てきれませんでした。

 もちろん、ゼロから新感覚の熱解析ソフトウェアを自社開発することに対して、チャレンジングなプロジェクトになることは間違いありませんでした。そのため、社内の開発陣から何度もヒアリングを行い、実現するための開発環境が社内にそろっていることを確認した上で、あとは決めたからには何が何でも実現することを強く決意したのです。

 そして、具体的なユーザーインタフェースをイメージする際には、これまで培ってきたサポートエンジニアとしての経験から、開発者とともに「いかにECADの操作性に近づけるか」という点を強く意識して、重点的に取り組みました。また、多くの基板設計者の方に慣れ親しんで使っていただけるよう、四角などの簡単な図形を描きながら直感的にモデルを作成できることが重要になってくると考えました。お客様の設計現場に何度も足を運び、意見交換をさせてもらいながら、どうすれば直感的でストレスなく解析モデルを作成することができるのか、改良に改良を重ねていきました。

――簡単な使い方を教えてください。

 まず、全体的な操作フローですが、 基板と部品のモデル作成→結果表示 といったシンプルなものです。モデル作成においては、2次元操作でモデリングが可能です。部品面や基板の内層毎に作業レイヤーを選択し、部品や配線エリア、ビアといった部品パーツをマウスで配置、移動するだけで、簡単に解析モデルを作成していくことができます。また、結果表示に関しては、「結果」ボタンをクリックするだけで、一瞬で温度分布が表示されます。シミュレーションツールでよくある、「メッシュ分割」、「ソルバー計算」、「ポスト処理」が自動的に実行されるわけです。

 さらに、結果を表示した状態でも、部品や配線を移動、変更することができ、結果もリアルタイムで即時表示されるため、検討案をその場ですぐに確認することができます(図4)。また解析レポートとしてまとめることも可能で、「出力」ボタンをクリックするだけで、HTML形式のレポートが出力されます(図5)。

図4 リアルタイム解析 図4 リアルタイム解析
図5 レポート出力機能 図5 レポート出力機能

 なお、ファイルI/O(図6)として、画像データを部品レイアウトの下書きとしてインポートし、利用できるほか、出力は、STREAMや熱設計PACのライブラリファイルとして受け渡すことができ、エレメカ協調設計が実現できます(部品・配線・サーマルビアおよび物性値・発熱量を引き継ぐことができます)。

図6 ファイルI/O 図6 ファイルI/O

――最後にユーザー様にひとことお願いします。

 PICLSは、基板設計の現場の声から生まれた、まさにニーズオリエンテッド型の熱解析ソフトウェアです。体験版をご用意していますので、とにかくまずは触れていただき、熱設計アイデアを気軽に試すことのできる新感覚を体験していただければと思います。シンプルで誰でもその場で使えるという点に関しては、ユニークなツールを作ることができたと考えています。なお、現在、新バージョンリリースに向け開発に着手しています。ユーザー様からリクエストの多かった「IDFファイルの読み込み」や「筐体接続による放熱効果」、「部品のライブラリ機能の搭載」を予定しており、基板設計現場の熱設計のフロントローディング化にさらに貢献できるのではないかと思います。また、ただ今「無料モニターキャンペーン」を実施しております。どなたでも無料にてPICLSをご利用いただけます。体験版では物足りない方はぜひこの機会にお申込ください。実際にご使用になってみて、お気付きの点やご要望がございましたら、どのようなことでもお寄せいただければ幸いです。PICLSの価格は198,000円〜。ホームページからも購入可能です。

基板専用熱解析ツール「PICLS」

PICLSは設計者が手軽に基板の熱解析を行うことができるツールです。2次元操作で簡単&高速に答えを出せるため、シミュレーションに不慣れな設計者でもすぐに利用することが可能です。また作成した基板データは、STREAMや熱設計PACへ出力することができるため、基板設計から機構設計へ解析データをシームレスに渡すことができます。

基板専用熱解析ツール「PICLS V1.0」を無料でモニター試用いただけます。

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第23回 基板の熱解析に特化――「PICLS」の開発背景



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提供:株式会社ソフトウェアクレイドル
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月16日

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