マブチモーターのノイズ対策Arduinoで学ぶ基礎からのモーター制御(3)(1/4 ページ)

「マブチモーター」に代表される直流ブラシ付きモーターは安価で入手性も良好ですが、Arduinoなどと組み合わせる際には発生するノイズが問題となることがあります。そこで今回は、「直流ブラシ付きモーターのノイズ対策」について解説します。

» 2016年02月19日 07時00分 公開
[今岡通博MONOist]

はじめに

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 「マブチモーター」に代表される直流ブラシ付きモーターは、乾電池をつなぐだけで回転する最も身近なモーターの1つです。しかし、Arduinoなど電気的にデリケートなデバイスと一緒に使う際には、モーターから発生するノイズにてこずることが多々あります。

 そこで今回は「直流ブラシ付きモーターのノイズ対策」についてお話します。最初にノイズの正体を目で見るため、オシロスコープの波形を観測することから始め、ノイズの正体を把握した上で、適切な電子部品を用いて対策に取り組んでいきたいと思います。

ノイズの正体

 モーターから発生するノイズと一口に言っても、電気的なノイズの他に摩擦音や振動もノイズといえます。今回はそのなかでもマイコンに悪影響を及ぼす可能性のある、電気的なノイズについて確認と対策を行います。

 「電気的なノイズ」といっても、その正体は一体何でしょう。その正体を突き止めるために実際にモーターへ3Vの電池をつなぎ、そのモーターのリード線の両端にオシロスコープをつないで波形を観測してみるところからはじめましょう。

photo PICO Technologyのペン型(ハンドヘルド型)オシロスコープ「PicoScope2104」。秋月電子通商などで1万5000円前後にて購入できます。スペックとしては50Msps/8bitです

 今回は波形をPCに取り込めるPICO Technologyのペン型(ハンドヘルド型)オシロスコープ「PicoScope2104」を用いました。測定できる周波数帯域はそれほど広くなありませんが、比較的低価格であり、時系列の信号に加えて周波数軸に対する信号強度を観測して簡易的なスペクトルアナライザーにするような使い方もできます。また、簡単に波形のスクリーンショットが取れるので、記録を残したりする(このような原稿を書く場合にも)のに重宝します。

 次の図がモーターを回転させているときのオシロスコープの波形です。

図1 モーター回転時の波形 モーター回転時の時間/電圧波形

 グラフは横軸が時間を表しており、縦軸が電圧です(マス目は500μ秒、0.2V)。交流成分のみを抽出するモードになっています。モーターが回っていないときの電圧は0〜0.2とほぼ0に近く、平らな波形をしています。

 図1を詳しく見ていきましょう。S字を横に寝かせたような波形が連続しているのが見て取れます。その波形が途切れている(不連続になっている)ところから上下に鋭いスパイク状の波形が出ています。

 この波形が不連続になっているところが、モーター内部のブラシと整流子が切り替わったタイミングです(詳しくは第2回の直流ブラシ付きモーターが回転する仕組みを参照してください)。この切り替わるタイミングで整流子とブラシの接点に火花が発生することがあり、それが電気ノイズの原因となります。

 このタイミングでスパイク状の鋭い電圧が発生しますが、この波形にはさまざまな周波数成分が含まれています。このオシロスコープは電気信号の周波数分布を見ることもできますので、そのモードに切り替えてみることにしましょう。

図2 電気信号の強さ/周波数の波形

 縦軸が電気信号の強さ、横軸が周波数を表すモードに切り替えました(図2)。このオシロスコープでは周波数を12.5MHまでしか観測できませんが、実際には100MHzくらいまでノイズが出ていると思われます。

 この広範囲の周波数に分布するノイズは2つに区分できます。30MHz以下をラインノイズ(伝導雑音端子電圧)と呼び、主に接続ケーブルを伝わるノイズとなります。また30MHz以上を輻射ノイズ(輻射雑音電界強度)と呼び、空中に放射され、電波となって障害を及ぼすノイズとなります。

 これらのノイズがマイコンの入力ポートに乗るとビットが反転して入力データが正しく取得できなかったり、割り込み線やリセットピンに乗った場合は予期せぬ割り込みやリセットが引き起こされることがあります。

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