特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

なぜ工場でネットワークを考えないといけないのか工場用イーサネット入門(1)(2/2 ページ)

» 2016年02月24日 10時00分 公開
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産業用Ethernet普及の背景

 産業用Ethernetはインダストリー4.0やIoTなどと密接に関係しているため一緒に語られることも多いですが、基本的には従来の制御通信に置き換わるものとしてご理解ください。

 近年普及している理由は、今までのオープンフィールドネットワークでは、多様化する生産設備の効率化ニーズへの対応が難しいためです。具体的には「通信速度が遅く、データ量に制限がある」「センサーなどの単価が下がる中でより多くのデバイスを導入したいが、拡張性に限界がある」「複数の設備機器を連携させたいが、異なるメーカーの機器同士では連携が難しい」などの問題が挙げられます。

 このような問題の解決のために、汎用的な規格で広く普及しているEthernetが使われることになりました。制御機器メーカーやロボットメーカーも含めて、これからの生産設備では産業用Ethernet対応機器への置き換えが進んでいきます。実際に、センサー装置や制御装置では、工程単位やライン単位などで、徐々にシリアル通信を中心としたさまざまな種類のオープンフィールドネットワークから、Ethernet通信を利用した産業用Ethernetへの置き換えが始まり、導入事例も増えてきました。

 下の図は、生産設備現場における現状のネットワークと今後のネットワークを比較したものです。現状のネットワークは「制御系」「情報系」「設備系」のネットワークがそれぞれ個別に配線されており、管理も当然バラバラで非常に複雑になっています。

 今後、産業用Ethernetの普及によって、これらの物理的な配線は統一され、統合基幹ネットワークにつなぎこむシンプルなネットワーク構成へと移っていきます。これによって、生産改善に伴うラインの変更負荷も下がっていくでしょう。

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photo 生産設備現場における現状(上)と今後(下)のネットワーク比較(クリックで拡大)

次回以降の連載内容

 本稿を含め全6回でご紹介する予定ですが、次回以降にお伝えすることを簡単に整理します。

  • 第2回テーマ「イーサネットってなんだろう」:産業用Ethernetは普通のEthernetと何が違うのでしょうか。Ethernet通信の仕組みを整理しながら、双方の違いを解説します(第2回:「工場用のイーサネットって何だろう?」)
  • 第3回テーマ「IP アドレスとネットワークデザイン」:産業用ネットワークではIPアドレスはどのように使われているのでしょうか。また、ネットワークデザインではどのような点を考慮すべきでしょうか。要点をお伝えします(第3回:「工場でも必要な、IPアドレスとネットワークデザインの考え方」)
  • 第4回テーマ「ハブとスイッチの違い」:ネットワークをつなぐ「ハブ」や、似たような機能をもつ「スイッチ」「スイッチングハブ」という機器も存在します。このようにさまざまな機器がありますが、呼び名が違うだけの機器もあれば、機能や役割が異なる機器もあります。このような違いを分かりやすく整理します
  • 第5回テーマ「賢いスイッチでできること(セキュリティ)」:製造設備をネットワークでつなげていく上で、セキュリティ対策は大きな課題です。特に、“これをやれば大丈夫”ということがないのが難しい点です。製造設備特有の課題に対してネットワーク機器で可能なセキュリティ対策を紹介します
  • 第6回テーマ「賢いスイッチでできること(運用)」:全ての設備は設計・導入だけでは終わりません。従来以上にさまざまなものがつながっていく環境ではネットワークそのものの重要性も増していきます。この重要なネットワークを守るために、賢いスイッチが運用に役立つ点や、現場でのトラブル対処の方法などを紹介します

筆者プロフィル

長澤宣和(ながさわ のりかず)

ネットワンパートナーズ マーケティング&ビジネス開発部。

2002年より、ネットワークを中心とした情報通信インフラ設備の提案・導入に従事。近年では、製造業を中心としたIoT化支援を中心に活動中。


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