3D設計推進者から見た SOLIDWORKS World 20163D設計推進者の眼(7)(2/3 ページ)

» 2016年02月26日 11時00分 公開

SOLIDWORKSのこと

 ここ数年、SOLIDWORKSは動作の安定性向上、図面作成機能の充実の継続、データ軽量化やネジ山ツール、双方向スイープなどといった部品のモデリング機能の拡充、合致条件を設定する際の構成部品プレビューウィンドウ、合致コントローラー、複数の構成部品のコピーと合致の保持などアセンブリ作成時の操作性の向上などが行われてきましたが、私的には「次バージョンは一体どうなるのだろうか?」と思っていました。

 次期バージョン「SOLIDWORKS 2017」については、『設計フォースを覚醒する「SOLIDWORKS 2017」の新機能』ということで、MONOist編集部の八木沢さんが記事にしているように、実装の可能性がある一部の機能が「Sneak Preview」として紹介されました。これは、(来場者の反響を見る目的などで)「こそっと披露する」といった意味ですね。

 そこに出てきた「入るかもしれない新機能」のうち「Transparent Section Views」は、断面表示させる上で、これまでは断面作成後は完全非表示化となっていた部分を透明化表示することで、全体像を見せつつも、見たい断面を表示するという優れた3D可視化機能です。これは便利だと思います。

 「Magnetic Mates」は、おのおののアセンブリに接続点と向きを設定することで、複数のサブアセンブリの間で、まるで磁石がくっつくように可視化的に合致を設定できるなど、優れた3D可視化機能を備えかつアセンブリ作成の操作性も向上したものでした。拘束を持たないCADでは、この拘束設定が面倒だとよく言います。装置設計での拘束は、設計者の意図を示しているものなので、私はその作業の難しさを感じませんが、これまでも見られるように、アセンブリ構築での合致設定時のプレビュー機能や、マウスアクションの低減などといったように、拘束を持つCADとしての操作性向上策なのでしょう。

 「Open and use many CAD formats」では、他社のCADデータのインポート機能を向上させたもので、いちいち他社CADデータを変換せずに、ダイレクトにインポートできるので、マルチCAD連携では便利そうだなと思いましたが、どこまでサクサクできるのか興味津々です。

 他には、「Thread feature Lead-in/Lead-out」というSOLIDWORKS 2016で登場したネジ山モデリングに対する拡充機能もありましたが、私のような機械設計における部品のモデリングでは、忠実にネジ山を表示することは今のところないので、メモリマネジメント上オーバースペックかもしれません。

 「eDrawings opens many more formats」では、もともとSOLIDWORKSのビュワーなのに、他社CAD対応が増えるとのこと。ダイレクトコンバートにあるように欧米の3D CADメーカーでは、クローズな環境ではなくて、オープンな環境で設計を行おうということの現れなのでしょうか。

 この製品は有償のCADビュワーにとって脅威になるかもしれません。そもそも単純な3D CADビュワーが有償だというには3Dデータ社内展開をする上では大きな問題だし、おかしな話だと思いますので。

 これら新機能の多くは、SOLIDWORKSユーザー要望に応える形で実現されていると聞いています。このSWW2016でもユーザー要望に対する投票が事前にSOLIDWORKS Forumでユーザーによる投票によってランキングされて、「TOP10リスト」として発表されました。もしかしたら、今回紹介されなかった機能も、「TOP10リスト」の中から次期バージョンに実装されるのでしょうか。

 SOLIDWORKSでは、次期バージョンBeta版の評価をユーザーが参加して行うBetaコンテストが世界的に行われます。これでは、ユーザー自身が新バージョンの単純なバグからユーザー固有のモデリング起因となるようなものまで問題点/改善すべき点を発見した場合にレポートを作成して提出します。そのレポートの重要度に応じてポイントが付与され、この獲得したポイントによって表彰されることもあります。今回私はSIMULATION部門において表彰を受けることができました。PDM部門でも日本人が表彰を受けました。

SW2016 Beta Contest Winners(私の会社の名前はLinuma(リーヌマ)ではなく、Iinuma(イイヌマ)です。笑)

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