幾何公差って測定はどうなるの?寸法を実感する! 測定講座(1)(1/3 ページ)

近年、幾何公差の普及の必要性が求められているが、製造する側ではその測定方法への課題が大きく、幾何公差に対応した測定技術の普及との同調なくして成立しないというのが現実である。本連載では幾何公差や寸法測定の課題に対する幾つかの取り組みを紹介していく。

» 2016年02月29日 10時00分 公開

 株式会社プラーナーの木下と申します。キャリアの主たる部分は、設計よりも上流の研究開発でありますが、光学製品中心に自由曲面を応用した製品に関わっており、幾何公差は必然的に多用していました。とりわけ複雑形状の3次元測定に関しては常に最新技術を模索してきました。現在は、幾何公差の普及に向けて、公的機関や企業向けのセミナーおよび実践指導を行っています。特に測定技術と絡めた構成を特徴としております。

 幾何公差は、今まで図面を描く側の設計者向けに普及を進めてきましたが、作る側ではいまだに抵抗感があり、確実に効果が期待できるのに食わず嫌いな面が否めません。また、導入にあたっては、設計部門のみが先行してもうまくいかず、若手からのボトムアップでもうまくいかず……といった状況を目にします。できれば組織全体の活動として、トップダウンでの取り組みが必要で、なおかつ協力会社含めて、関係組織が同調して取り組んでいくことが成功の秘訣と考えます。

 本連載「寸法を実感する! 測定講座」では「幾何公差とはどんなものか」、特に測定する側の視点での課題に関して、さまざまな取り組みの紹介をしながら、読者の皆さまの理解を深めていただき、幾何公差の普及に貢献できればと考えています。しばらくお付き合いいただければ幸いです。

「寸法を実感する! 測定講座」とは

 本連載では、まず「幾何公差とはどんなものか」を代表図から知っていただき、そこに記載されている幾何公差をさまざまな測定装置で実際に測ってみることを同時体験していただきます。測定に用いるワークを従来の機械加工と近年話題の3Dプリンタの両方で製作し、その精度の違いも測定結果から同様に体験していただきます。

 まず、第1回の今回は「幾何公差ってどんなもの?」というところから入りますが、世の中に幾何公差に関して解説している書籍、セミナーは数多くあるので、歴史的なことや背景はそちらに譲るとして、端的に皆さんが知りたいと思われること、現実的な側面に絞ってお話を進めたいと考えます。

 私どもでは、幾何公差を図1のように分類しています。

図1:幾何公差の分類と記号(JIS B 0021を基に編集)

 まず「データム」という幾何的基準に関連する(関係する)公差と、関連しない公差に分け、関連する公差の中で、さらに姿勢公差、位置公差、振れ公差に分類しています。まず、データムに関連しない公差は形体(幾何要素)単独の形状を規制するので形状公差と言っています。この中は、機械工業関係者にはかつてからおなじみの、真直度、平面度、真円度、円筒度などが並び、唯一、輪郭度が新しい概念かもしれません。これも、一部の業界では既に用いられ、時にはこれが形状精度という名で使われていたかもしれません。私も長年、光学部品に関わる中では、この輪郭度は慣れ親しんだ重要な形状公差でした。

 次に、データムに関連する公差は、姿勢公差(データムとの傾斜関係を規制し位置は規制していない)、位置公差(データムとの位置や姿勢まで規制していて、応用範囲が広く、今後大いに活用されていく公差である)、振れ公差(回転する部品に多く用いられ、動的な公差である)に分類されます。

 本連載では、順次していく公差の説明と共に実際に、ワークをさまざまな測定装置で測定し、その測定結果を皆さんと共に検証していきます。

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