自動ブレーキなしで燃費も普通なのに欧州販売トップ、「ルーテシア」の魅力とは車両デザイン(1/3 ページ)

ルノー・ジャポンは、主力コンパクトカー「ルーテシア インテンス/ゼン」を一部改良し、JC08モード燃費を前モデル比で2割向上した。しかし、国内自動車メーカーの小型車の燃費には見劣りするし、自動ブレーキなど予防安全装備もない。それでもルーテシアは欧州販売トップで、日本でも好調だ。その理由とは?

» 2016年03月07日 11時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
2016年2月に一部改良を施されたルノー「ルーテシア インテンス」 2016年2月に一部改良を施されたルノー「ルーテシア インテンス」 (クリックして拡大)

 ルノー・ジャポンは2016年2月25日、主力コンパクトカー「ルーテシア インテンス/ゼン」を一部改良し、JC08モード燃費を前モデル比で2割向上した。改良の目玉はアイドリングストップ機能をインテンスとゼンに搭載した点と、インテリアデザインの変更、車両価格の値下げだ。

 ただ、燃費が前モデルから改善したとはいえルーテシアのJC08モード燃費は17.4km/l(リットル)。国内自動車メーカーのコンパクトカーや軽自動車で30km/l超が珍しくないことを考えると、燃費の比較では見劣りする。また、ルノー車には自動ブレーキなど予防安全装備がないのも、クルマを選ぶ人によっては減点要素かもしれない。

 欧州では「CLIO(クリオ)」の名称で販売されているルーテシアは突出したセールスポイントを持たないようにも見えるが、フランス国内では2014年と2015年に2年連続で販売台数がトップ。欧州全体のBセグメントの販売台数でも、2014年には2位、2015年は1位に上り詰めたモデルだ。日本でも女性客を中心に売り上げを伸ばしている。2時間ほどルーテシアを運転して、その魅力を考えてみた。

見た目でクルマの購入を決める女性たち

「ルーテシア」は「カングー」並みに売れている 「ルーテシア」は「カングー」並みに売れている (クリックして拡大) 出典:ルノー

 日本国内の輸入車市場を見ると、コンパクトカーのユーザーは女性が大半だ。ルーテシアも例外ではなく「購入決定権を持つ人ではなく、実際にルーテシアを運転するお客さまの5割が女性」(ルノー・ジャポン マーケティング部 チーフプロダクトマネージャーのブレン・フレデリック氏)だという。

 ルーテシアに乗り替えるのは、国産自動車メーカーのコンパクトカーやプジョー「208」、フォルクスワーゲン「ポロ」などのオーナーが多い。より大きなサイズのクルマから乗り換えるダウンサイジング需要もある。2015年のルーテシアの国内販売台数は1800台超だった。ルノー・ジャポンの2015年の販売台数5082台の3割強を占め、これまで国内で最も人気のあるルノー車だった「カングー」を若干上回った。

 ルーテシアを選ぶ日本の女性たちが判断基準にするのは、内外装のデザインと色の設定だという。少なくとも900人くらいの女性が、見た目で決断を下したということだ。

 国内自動車メーカーのコンパクトカーと燃費や装備で比較すると、ルーテシアは割高といえなくもない。ルーテシアはインテンスが4万9000円値下げして239万9千円、ゼンの排気量1.2lのグレードは1万2000円値下げの219万9000円だ。

デミオアクアポロ コンパクトカー市場はマツダ「デミオ」、トヨタ自動車「アクア」、フォルクスワーゲン「ポロ」など強力な競合車がひしめく (クリックして拡大) 出典:マツダ、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン

 これに対し、200万円台の国内自動車メーカーのコンパクトカーでは、37.0km/lのトヨタ自動車「アクア」や36.4km/lのホンダ「フィット」といったハイブリッド車、ディーゼルエンジンで30.0km/lを達成したマツダ「デミオ」が人気だ。また、自動ブレーキなどの運転支援システムは、軽自動車も含めて付いていて当たり前になりつつある。同程度の価格で、燃費がよく、装備が充実しているとなれば、ルーテシアではなく他社のクルマを買いそうなものだ。

 それでも、ルーテシアは女性の心をつかむ。強みはルノーのデザインコンセプト「サイクル・オブ・ライフ」にありそうだ。

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