インタビュー
» 2016年03月11日 11時00分 UPDATE

車載ソフトウェア Automotive Grade Linux インタビュー:車載Linuxのオープンソース活動はアップルとグーグルへの対抗軸に成り得るか (1/2)

トヨタ自動車などの自動車メーカーが、車載Linux「Automotive Grade Linux(AGL)」を中核とするオープンソース活動に注力している。2016年1月には車載情報機器向けの独自ディストリビューションを発表し、参加企業も国内自動車メーカーを中心に増加している。AGLの活動について、Linux Foundationの日本代表ディレクタに聞いた。

[朴尚洙,MONOist]

 「自動車業界には大きな変化が訪れようとしている」――Apple(アップル)のCEOであるティム・クック氏が語った言葉だ。実際に、車載情報機器を用いたサービスや自動運転技術の開発では、アップルやGoogle(グーグル)といった従来の自動車業界外の企業の存在感が増している。

 このまま自動車業界は「大きな変化」の飲みこまれてしまうのだろうか。この「大きな変化」に対する1つの解として、トヨタ自動車などの自動車メーカーが活路を見いだしたのが、車載Linux「Automotive Grade Linux(AGL)」を中核とするオープンソース活動である。

 当初AGLの活動は、Intel(インテル)などが推進するLinux開発プロジェクト「Tizen」のうち車載情報機器向けの「Tizen IVI」がベースになっていた。しかし2015年からは方針を転換。Tizen IVIベースではない、独自のディストリビューションを2016年1月開催の「CES 2016」で発表する計画を明らかにしていた。

 そして2016年1月開催のCES 2016では、ユニファイドコードベース(UCB)と呼ぶ、Yocto Projectベースにした新しいディストリビューションを発表。併せて、新たなAGLのメンバーとして、マツダ、富士重工業、三菱自動車、Ford Motor(フォード)が加わることも発表した(関連記事:車載Linuxに新開発のディストリビューション、Tizen IVIではない)。

 このように活動を活発化させているAGLだが、2015年から転換した方針や、新ディストリビューションである「AGL UCB」の展開について、AGLの活動を支えるLinux Foundationで日本代表ディレクタを務める福安徳晃氏に話を聞いた。



Linux Foundationの福安徳晃氏 Linux Foundationの福安徳晃氏

MONOist 独自ディストリビューションであるAGL UCBを開発する方針を決めたのはいつごろか。

福安氏 2015年2月のオールメンバーミーティングで、2016年1月のCES 2016をめどにディストリビューションを作ることを決めた。そして、2015年4月にプロジェクトを立ち上げ、同年5月にキックオフミーティングを行い、6月の「Automotive Linux Summit 2015」では要求仕様書を発表した。そこから約半年後の12月中旬には、CES 2016で発表した新ディストリビューションであるAGL UCBのバージョン1.0が完成した。

MONOist 開発期間が半年と短く済ませられたのはなぜか。

福安氏 AGL UCBの開発を決めたときに、スケジュールファーストポリシーで開発スケジュールを守ることを決めていた。とはいえ、新型車開発に3〜5年かけるなど開発サイクルが比較的長めの自動車業界において、約半年でディストリビューションが完成したのは画期的なことだ。AGLの参加企業の決心が見えてくる。

MONOist 名称に使っているUCB(Unified Code Base)という言葉にはどういった意味があるのか。

福安氏 AGL UCBには、Tizen IVIをベースに行ってきた活動で得た知見やGENIVIでの取り組みなどが統合(Unified)されている。だからこそ、多くの人々に広く使ってもらいたいという思いを「UCB」に込めた。

 AGL UCBの基になったのは、GENIVIで策定していたMeta-IVIを参照するMeta-IVI Commonだ。Meta-IVI Commonは、AGL UCBを開発する前に、かつてベースになっていたTizen IVIをリスト化し、それに新たに欲しい機能リストを加えたものだ。このMeta-IVI Commonの開発にはGENIVIに参加する開発者も加わった。

MONOist CES 2016ではAGL UCBについてどのような展示を行ったのか。

福安氏 ルネサス エレクトロニクスの車載情報機器向けSoC(System on Chip)の開発ボード「Porter」を使って、ホームスクリーン、マルチメディア、HVAC、ナビゲーションのデモを見せた。また、車載LAN規格であるMOSTのドライバをMicrochip Technologyが開発してもらい、これをオープンソースソフトウェアとして利用できるようにした。

 中でも、制御系システムと関わるHVACでデモを披露できたことは大きな成果だと考えている。

 CES 2016でのAGLの展示はGENIVIブースの中で行った。このことからも分かるように、AGLとGENIVIはかつてない関係性になっている。AGLで積極的に活動していたJaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)のMatt Jones氏が、GENIVIのプレジデントを務めていることも大きい。

「CES 2016」におけるAGLの展示 「CES 2016」におけるAGLの展示。HVAC制御画面から、冷暖房や送風の制御を行えることを示した(クリックで拡大) 出典:Linux Foundation
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