製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

稼ぐ個別改善、守る自主保全活動いまさら聞けないTPM(3)(1/3 ページ)

本連載「いまさら聞けないTPM」では、TPM(Total Productive Maintenance)とは何か、そして実際に成果を得るためにどういうことに取り組めばいいかという点を解説する。第3回となる今回は「TPMの8つの活動(8本柱)」のうち個別改善と自主保全活動の概要について紹介する。

» 2016年03月16日 13時00分 公開

第2回:「TPM活動の進め方、ロス撲滅のための8つの活動

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個別改善とは

 個別改善とは、TPM 展開の主要な活動の1つである「生産システム効率化の個別改善」のことを略したものです。改善対象設備または製品、工程・ライン・プロセスを選び、改善テーマ別にプロジェクト活動でロスゼロに挑戦することをいいます。ロス-コストマトリックスやロスツリーから課題を抽出し、方針管理の目標を達成するための方策を推進することになります。

 個別改善以外の活動の柱は、ロスが発生しないようにする予防の活動です。仕組みの見直しや現状業務の質の向上を行うものですが、個別改善活動は現在発生しているロスの現象に的を当て個別に撲滅していくものになります。

photo 図1 トラブル改善に向けた個別改善と予防活動の構造(クリックで拡大)出典:JMAC

個別改善の必要性

 業績を永続的に向上させていくためには、維持する力と改善する力の双方が必要であり、しかもそのバランスが大切です。片方だけが優れていても、業績を長期にわたって向上させることは困難です。この改善する力を養い、経済的な実質効果を上げる活動が個別改善になります。個別改善は、生産効率化を阻害する16大ロスを徹底して排除して、生産性を飛躍的に向上させることに主眼をおくものです。

 これに対して自主保全は、どちらかというと維持する力を養う活動で、個別改善やその他で上げた成果を長続きするように、現場でしっかり支えるものです。階層により仕事の内容の比重が異なるので注意することが必要です。

 また個別改善は、自主保全が「自分の設備は自分で守る」、品質保全が「不良ゼロの条件設定と条件管理」のシステム構築のねらいがあるのに対して、そのねらいを達成するための手段である。従って、個別改善とその他の柱との位置付けはおおむね図2のようになります。

photo 図2 階層別に見た維持と改善の業務割合(クリックで拡大)出典:JMAC

 またロス項目を、計画保全は故障ゼロ、管理間接部門は管理ロスゼロのように、柱ごとに重点テーマを分担して取り組むと効果的です。各ロスの撲滅ステップ、マニュアルを整備し改善のスピードとレベルアップを図ることも大切なサポート活動です。

 これらを通して、ロスゼロの実現により固有技術の向上、すなわち技術のブレークスルーを行うことが重要です。溶接でのスパッタレスや極小ビード、金型成型でのバリレスや異物混入レス化、充填での過充填ゼロ、連続生産、無人運転、ヒューマンエラーのレス化、工程レス化、高速化、長寿命化などに挑戦し技術力を高め続けるためにゼロや極限を目指すことが求められます。

 各企業の製品に関係する固有技術の他、化学工学、熱力学、水力学、金属材料、新素材、計装・制御工学、経済性工学などの水準を上げる必要があります。ただ、これらは一朝一夕にかなえられるものでもなく、積極的なTPMの個別改善活動によってレベルアップを図っていくことになるでしょう。とにかく、個別改善は実行あるのみといえます。

 ロスゼロに向けて必要なアプローチとしてPM分析がありますので、少し紹介しましょう。PM分析とは、現象を物理的に解析し、メカニズムを4Mとの関連性から解析していく手法であり、慢性的なロスの改善に適しています。PM分析は、たくさんの複合原因によって起きているロスの対策や、いろいろな手を打ってきたがなかなか解決できないもの、あるいは解決に長期間を要するような慢性的なトラブルを「ゼロ」にすることを狙ったものです。例えば不良率0.05%をゼロにするなど、極限追求のための手法です。ロスや不良の発生率が0.5%とか1%のように高い場合は、劣化の復元や基本条件の整備を徹底して行ったり、なぜなぜ分析などの従来手法を使ってある水準まで改善し、後にPM分析を適用するやり方が有効で、従来の解析ツールとの使い分けが重要になります。

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