「介護向けアシストスーツを実質1万円」の挑戦(1/2 ページ)

入浴補助やベッドからの移乗など介護現場における作業負荷を軽減する1つの提案がパワードスーツだが、価格的な問題もあり広く普及しているとはいえない。法政大学の石井教授は「介護現場向けのアシストスーツを実質1万円」で提供するという。

» 2016年03月18日 13時55分 公開
[渡邊宏MONOist]

 「介護現場向けのアシストスーツを実質1万円で提供する」――こんな大胆なコンセプトを掲げて科学技術振興機構(JST)の大学発新産業プログラムに開発したアシストスーツを紹介したのは、法政大学 理工学部 教授の石井千春氏(機械工学科 機械工学専修)だ。

 「クールベスト(空〜るベスト)」と名付けられた腰部装着型のアシストスーツは、圧縮空気で動く人工筋肉を動力源として、装着者の作業を補助する。装着者の腰部動作を補助するアシストスーツはサイバーダインやイノフィス、アシストリンクなどが既に先行するが、クールベストは介護現場への導入を狙い、徹底した軽量化と着脱の容易さ、そして低価格を念頭に置いているのが大きな特徴だ。

「クールベスト(空〜るベスト)」による離床支援 「クールベスト(空〜るベスト)」による離床支援

 介護福祉現場における作業者の補助をアシストスーツで行うという製品は既に存在するが、石井氏は既存製品について現場から「重量に起因する取り回しの困難さ」「装着作業の煩雑さ」「性能は十分だが高価」といった声があると指摘する。そのためクールベストでは利用状態で3〜4kgという重量、最短30秒の装着、製作原価約10万円という価格を目指して開発されている。

 エアタンクやバッテリーなど主要部品には既存品を利用し、できる限り機構をシンプルにすることで軽量化と低価格化を狙った。着脱については軽量化の他、脚への固定をひさパットを介する形式とするなどで容易さを高めている。日常業務への利用を想定することから、水洗い(分解洗浄)が容易な素材と構造も採用した。

 また、想定する利用シーンが入浴補助やベッドからイスへの移乗など日常生活に密着することから、“メカメカしいもの”としての違和感を与えないよう、「チカラをアシストする服」をコンセプトに人工筋肉のカラーバリエーションをそろえる他、スーツ自体が洋服の一部となるように気を配っている。

人工筋肉のカラーを黄色とし、バッテリーと制御部、圧縮空気タンク(1L)をウエストポーチに収納 人工筋肉のカラーを黄色とし、バッテリーと制御部、圧縮空気タンク(1L)をウエストポーチに収納
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.