トヨタが認めた「つながる工場」規格、既存設備のIoT化も簡単に実現へハノーバーメッセ2016特別企画ブースレポート(ベッコフオートメーション)

「つながる工場」の主役へ――。ドイツのBeckhoff Automationは、ハノーバーメッセ2016において、産業用ネットワーク規格「EtherCAT」関連製品を紹介した他、既存生産設備のIoT対応を簡単に実現する機器やソリューション提案などを行った。

» 2016年05月27日 10時00分 公開
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トヨタがEtherCAT全面採用を発表

 ドイツのBeckhoff Automation(ベッコフオートメーション、以下ベッコフ)は、ハノーバーメッセ2016(2016年4月25〜29日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において「つながる工場」を具体化する技術群を出展。同社が開発した産業用ネットワーク規格「EtherCAT」関連製品を紹介した他、既存生産設備のIoT対応を簡単に実現する機器やソリューションの提案などを行った。

photo ハノーバーメッセ2016のベッコフブース

 ベッコフはドイツ北西部のVerl(フェアル)に本社を置き、全世界で約3000人の従業員を抱える企業である。日本を含めて34カ国に現地法人を置き、75カ国以上でビジネスを展開している。そのベッコフの中心製品の1つが同社が開発した産業用オープンネットワーク規格「EtherCAT」である。

 EtherCATはイーサネット(Ethernet)と互換性のあるオープンなフィールドネットワークである。標準品で12.5μ秒のサイクルタイムが実証されている高速性、μ秒未満で保証されるノード間の同期性能、I/Oやモーション・セーフティ機器を同一のネットワークに混在できる省配線、PC制御との親和性などの特徴を持つ。現在は2003年に設立されたETG(EtherCAT Technology Group)により、機能要件や認証手順などが規定・管理され、オープン化が進む産業用オートメーションの世界において注目度が高まっている。

 これらの特徴を高く評価し、ハノーバーメッセ2016で工場内のネットワークについて、EtherCATの全面採用を発表したのが、トヨタ自動車(以下、トヨタ)である。同社はEtherCATの高速性とともに、オープン化が決まった新規格の「EtherCAT P」を高く評価し、全面導入を決めたという。

photo EtherCATの全面採用を決め握手するトヨタの大倉氏(右)とETG チェアマンのマーティン・ロスタン氏(左)

電力と通信を1本で行える「EtherCAT P」

 ハノーバーメッセ2016のベッコフブースでも大きな注目を集めた「EtherCAT P」は、EtherCATにより通信だけでなく電源供給も可能とした規格である。ベッコフでは従来モーターの制御と電源供給を1本のケーブルで行う「One Cable Technology(OCT)」という技術を保有していたが「EtherCAT P」はこの技術を応用して実現した。

 制御機器の配線では、通常は通信と電源の2系統の配線が必要だが、「EtherCAT P」を使うことで省線化が実現でき、コストと設置スペースの削減が可能となる。さらに同規格が優れているのは通常の「EtherCAT」でのシステムに、「EtherCAT P」を混ぜてもすぐに機能するという点である。既存のシステムからすぐに切り替えるなど移行が容易となる。ETGでは現在標準化に向けた仕様策定を進めており、2016年9月には仕様書ができる予定としている。

photo therCAT Pの省配線の様子。赤丸部分はEtherCAT Pによる配線。1本で通信と電源供給が行える。青丸部分は通常のEtherCATの配線。黄色の通信用の配線と共に黒の電源供給用の配線が必要

「つながる工場」を容易に実現する

 さらに、「つながる工場」実現の大きな課題となっている既存設備のIoT(Internet of Things)化を実現するソリューションなども用意した。ベッコフは、ドイツ連邦政府が推進するモノづくり革新プロジェクトである「インダストリー4.0」などにも積極的に参加しているが、インダストリー4.0は、製造現場でICT(情報通信技術)を活用することで、より効率的に高付加価値にする仕組みである。そのためには、工場内のシステムが水平、垂直に「つながる」ことが必要で、その中で生まれるデータを収集して分析し、実際の作業などに生かしていくということが求められている。

photo インダストリー4.0をイメージした展示。現場の機器からクラウドへ接続する様子を示している

 製造現場のデータ収集では、各機器のセンサー情報をそのままクラウド環境に上げるような収集方法は、通信帯域や速度の問題で現実的でないとされてきた。そのため、エッジ(現場)環境で情報の選別を行うようなエッジコンピューティングや、エッジとクラウドの間でこの役割を担うフォグコンピューティングなどが注目を集めていたが、ベッコフでは今回あえて、I/O情報をそのままクラウド環境に上げるIoTバスカプラー「EK9160」を出展した。

photo IoTバスカプラー「EK9160」。既存のI/Oに接続するだけで簡単にクラウドに情報を上げることができる

 「EK9160」は、ベッコフのEtherCAT I/Oに接続するだけで、簡単にI/Oデータをクラウド環境に送ることができる機器である。通信プロトコルとしてはAMQPとMQTTを採用し、機器の情報を安全にクラウド上に集めることができる。「EK9160」では機器の制御はできないが、稼働監視や予防保全用のデータ取得などについては十分に対応可能だ。古い工場などでは数十年前の製造機器が現在も稼働しているというような場合もあるが、これらの機器にセンサーや通信機器を設置してデータを取得するのは容易ではない。「EK9160」でまずはI/Oデータをクラウドで管理・見える化できるようにすることで、「つながる工場」の利点を簡単に享受できるようになる。

「つながる工場」の主役に

 その他、ベッコフブースでは、EtherCATを活用したリニア搬送システム「XTS(eXtended Transport System)」や、30周年を迎えたPCベース制御システム「TwinCAT」などの技術を紹介。オープンで高速・高精度である特徴などをアピールした。

 インダストリー4.0などが目指す柔軟な生産体制の実現には「つながる」ということが必須となる。しかし、既存の設備との継続性や投資負担などを考えると、この「つながる」の実現は多くの製造業にとって簡単なことではない。

 ただ、ベッコフでは産業用用途での高速・高精度、高信頼性などに応えつつ、オープン性や継続性を意識した取り組みを継続。それが、EtherCATなどの採用拡大やIoTによる稼働監視を実現するカプラーの開発にもつながってきているといえる。今回のトヨタのEtherCAT全面採用などを見てもベッコフは一躍「つながる工場」実現の主役に躍り出た感もある。工場内の「つながる」に悩んだ場合は、まずは相談してみてはいかがだろうか。

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提供:ベッコフオートメーション株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月26日

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