近くて遠い、自動運転車実現までの道のりFuture Connected Cars USAレポート(2/4 ページ)

» 2016年06月03日 10時00分 公開

アップル、グーグル、ウーバーが自動車業界に与える影響

 当事者から情報が全く明かされないという状況にも関わらず、グーグル、またはApple(アップル)は同カンファレンスにおいて何かにつけて話題にのぼった。

 調査会社のFrost&Sullivan(フロスト&サリバン)のProgram Manager−Auto IT and ConnectivityであるNiranjan Manohar氏は、「Assessing Google and Apple’s Plans and how it will impact the industry and your business model?」と題したセッションにおいて、グーグルやアップル、Uber(ウーバー)の戦略や、各社が提供するクルマのエコシステムに与える影響について語った。

 まずManohar氏は各社の主力事業と強み、戦略を勘案し、アップルを「True Disruptors」、グーグルを「Technology Disrupters」、ウーバーを「Mobility Champions」に分類した。また、同氏による各社の分析は下記の通りにまとめることができる。

アップルとグーグル、ウーバーの分類 アップルとグーグル、ウーバーの分類(クリックで拡大) 出典:フロスト&サリバン

 アップルの主力事業はプロダクト販売であり、全ての市場においてハイエンドな製品を提供しブランドを確立する戦略に出ている。それを支えるのが無限の資金力とチーム(人財)、そして献身的なファン層だ。「CarPlay」により「iPhone」を最大限クルマで活用することに取り組んでいる他、触覚ディスプレイをはじめとする、クルマ向けのユーザーエクスペリエンスを向上させるためのさまざまな特許を取得している。

 これは、単にクルマを提供するのではなく、Tesla Motors(テスラ)のように、これまでにない新たなユーザーエクスペリエンスを提供することを目指しているといえる。つまり、アップルはこれまで同様、新たなユーザーエクスペリエンスを提供することでこれまでのクルマの概念を壊す「真の破壊者(True Disruptor)」というわけだ。

 一方、グーグルはというと、これまで同社が培ってきたクラウドや分析、モバイル、サービスなどあらゆる技術を駆使した「Android Auto」によって車載システムを提供している他、自動運転においても既に何百マイルもの走行実績も有している。その他にも「Google Maps」や交通情報アプリの「Waze」といったものも自社のサービスポートフォリオの中にあり、自動車分野に参入するには既に十分な技術を持ち合わせている。

 ただし、グーグルが自動車産業に参入する目的は「世界中の情報を収集し、整理する」こと、つまり世界中の全ての情報を収集して広告につなげることにあり自動車はその手段にすぎない。この特質から「反グーグル」の姿勢を取る企業も少なくない。

 しかし、前述の通りFCAがグーグルと自動運転技術で協業することが発表されている。FCAの提携目的は、グーグルの人工知能(AI)や分析、地図といった技術にあるとみられている。また過去にはGeneral Motors(GM)もグーグルに興味を示しているなど、決して全て自動車メーカーがグーグルとの提携に後ろ向きというわけではない。

 グーグルは自社で自動運転車を開発しているが、決して自らクルマを作りたいわけではない、というのがManohar氏の見方だ。グーグルは同社の技術力により輸送業界を革新するための手段として、パートナーのクルマを用いている「技術による破壊者(Technology Disruptors)」といえる。

 もう1社、特筆すべきは配車サービスを展開するウーバーである。ウーバーは既にタクシー業界に革新をもたらしている。非常に安いコストで既に展開地域に根付いており、一部エリアでは宅配サービスの展開も始めている(関連記事:配車サービスにとどまらないUberの野望)。法規制要因を除けば今後もさらに成長する余地がある。

 また親和性の高さから、自動運転車の配車サービスへの適応は最も早いのではないかとみられている。ウーバーは地図サービス「HERE」の買収には至らなかった一方で、2015年3月にはローカル地図情報サービスの「deCarta」を、また2015年6月にはMicrosoft(マイクロソフト)から「Bing Maps」の関連資産を買収している。その中には3Dビューに関する技術も含まれており、今後独自の地図アプリを開発するものとみられている。

 さらに2015年2月には、カーネギーメロン大学との提携により自動運転車の開発を促進する姿勢を見せている。人工知能の研究にも着手するなど、自動運転車実現に向けた準備は整ってきた。ウーバーは既に変革した「配車サービス業界の王者(Mobility Champions)」として、クルマ向けモビリティサービスプロバイダとしての地位を狙っているといえる。

 このようにIT企業各社は、それぞれの事業領域を発展させるために自動車市場への参入を試みているわけだが、一方で、自動車関連プレーヤーの視点はどこにあるのか。

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