自動車の情報セキュリティの“ものさし”を作る車載セキュリティ JasPar インタビュー(1/3 ページ)

自動運転技術やコネクテッドカーの登場により、自動車の情報セキュリティ=車載セキュリティ対策は急務になっている。国内の車載シフトウェア標準化団体・JasParで車載セキュリティ推進ワーキンググループ主査を務めるトヨタ自動車 電子プラットフォーム開発部長の橋本雅人氏に、国内外における車載セキュリティの取り組みについて聞いた。

» 2016年06月20日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 自動車の進化は加速している。カーナビゲーションの登場から、電気自動車の実用化、自動ブレーキの搭載など、さまざまなエポックメイキングが生まれてきた。しかし今後の自動車の進化は、自動車が通信でつながることによって実現される機能になる。既に自動車とスマートフォンが連携するようになっており、2020年までに実用化されるという部分的自動運転でも通信接続する自動車“コネクテッドカー”が重要な役割を果たすといわれている。

 しかし、自動車が通信でつながるということは、PCやスマートフォンと同様にサイバー攻撃にさらされることを意味している。自動車が人命に直接大きな影響を与える製品である以上、自動車の情報セキュリティ=車載セキュリティ対策は急務と言ってもいい。

 そこで、国内の車載シフトウェア標準化団体・JasParの車載セキュリティ推進ワーキンググループ主査を務める、トヨタ自動車 電子プラットフォーム開発部長の橋本雅人氏に、国内外における車載セキュリティの取り組みについて聞いた。



MONOist JasParはこれまで、車載ネットワークのFlexRay、車載ソフトウェアのAUTOSAR、機能安全規格のISO 26262といったテーマで標準化に取り組んできた。車載セキュリティについてはいつごろから取り組んでいるのか。

JasParの橋本雅人氏 JasParの橋本雅人氏

橋本氏 現在、自動運転技術の開発が加速しているとともに、自動車が通信でつながるコネクテッドカーも当たり前のものになりつつある。

 これまでも自動車がつながっていなかったわけではない。VICSやITS Connectといったインフラ協調システムでも、自動車と通信でつながっていたが、これらは基本的に一方向の通信だった。しかし、コネクテッドカーにおけるテレマティクスの通信は双方向である点が大きく異なる。もちろん、この双方向の通信を担うスマートフォンの普及が背景にある。

 そこで2013年半ばごろから、JasParで車載セキュリティに注力するようになった。

MONOist 日本、米国、欧州における車載セキュリティへの取り組みはどのように進められているのか。

橋本氏 日米欧とも、自動車のセキュリティ、セーフティ、そして自動運転が話題になっている。中でも車載セキュリティの標準化活動については、特に米国で、政府、世論とも注目度が急上昇している。

 米国では例年8月に開催される「BlackHat/Defocon」で、ホワイトハッカーが自動車のセキュリティの欠陥を報告している。2013年は「プリウス」のハッキング、2014年は各社のアーキテクチャ分析、2015年はFiat Chirysler Automobile(FCA)の「ジープ」の遠隔ハッキングの報告があった。2013年のプリウスが車両内に乗り込んで実施したのに対して、ジープのハッキングはテレマティクスシステムを分析したうえで遠隔からハッキングできた点が異なる。話題になったので、記憶している人も多いだろう。

「BlackHat/Defocon」における自動車のセキュリティ欠陥の報告 「BlackHat/Defocon」における自動車のセキュリティ欠陥の報告(クリックで拡大) 出典:JasPar
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