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» 2016年07月12日 13時00分 UPDATE

CAE事例:スペースデブリ問題に取り組むベンチャーのCAE活用 (1/3)

対策が急がれるスペースデブリ(宇宙ゴミ)問題に先陣を切って取り組むのがアストロスケールだ。同社はPLMベンダー主催イベントでデブリの現状や同社の取り組み内容を紹介するとともに、デブリの除去を担う人工衛星の構造解析の事例を紹介した。

[加藤まどみ,MONOist]

 2016年6月9日に開催されたシーメンスPLMソフトウェアのユーザー向けイベント「Siemens PLM Connection Japan 2016」において、アストロスケール 開発部 Engineerの荒木友太氏が「アストロスケールにおけるFemapを用いた衛星設計への活用」のタイトルで講演を行った。同氏はスペースデブリ(宇宙ゴミ)の現状や、同社の人工衛星を利用した対策計画を解説するとともに、人工衛星の設計における構造解析の事例について話した。

アストロスケール 開発部 Engineer 荒木友太氏

 アストロスケールはスペースデブリの除去に取り組むベンチャー企業だ。岡田光信氏によって2013年5月に設立された。本社機能はシンガポールのASTROSCALE PTE. LTD.にあり、東京都墨田区のアストロスケールは人工衛星の研究開発や製造、品質保証など技術面を担っている。JAXAおよび9大学と提携するとともに50社の企業と部品供給の関係を持つ。また産業革新機構、ジャフコおよび個人投資家の投資を受けている。同社はベンチャー企業のビジネスモデルとしても注目されており、日本発ベンチャーとしてはめずらしくハーバード・ビジネス・スクールでケーススタディとして取り上げられるほどだ。

 荒木氏は「デブリ除去は単独で解決できるような問題ではない」という。そのためスペーススイーパーというチームを組み、技術・資金の両面から課題を1つずつ解決しながら研究開発を進めているという。

10センチ以上のデブリは2万3千個以上

 1957年に初の人工衛星スプートニク1号が宇宙空間へと打ち上げられた。それ以来、宇宙開発が進むにつれてスペースデブリは増加し続けている。デブリの元となるのは運用を終了した衛星や、有人宇宙船の人が乗る部分以外の残骸、使用済みロケット、宇宙飛行士が船外活動の際に落としたものなどがある。

 10cm以上のデブリについては2万3千個以上が確認、リスト化されている。一方それ以下のサイズについては正確な数は把握されていない。これらが秒速7〜9kmという猛スピードで宇宙空間を飛び交っている。

 最もデブリが多く存在するのは高度600〜1000kmの範囲だ。宇宙飛行士が活動する国際宇宙ステーションが周回しているのは高度300〜400kmで、この高さではほんのわずかだが大気が存在している。そのため抵抗によってデブリのスピードは落ち、徐々に高度を下げて何年か後に大気圏に突入して燃え尽きる。一方600〜1000kmの高さでは、落下して燃え尽きるまでにおよそ数十年から千年も掛かる。デブリは相変わらず増え続けているため、衝突回数が増え、デブリが連鎖的に増殖する可能性も懸念されている。

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