連載
» 2016年07月19日 10時00分 UPDATE

鈴村道場(3):家電業界の常識「コモディティ=コストダウンが必須」は本当に正しいのか (1/4)

トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏による連載コラム「鈴村道場」。今回は、家電業界の経営難と併せて語られることが多い「コモディティ=コストダウンが必須」が本当に正しいかについて解説する。

[エフ・ピー・エム研究所 鈴村尚久/構成:株式会社アムイ 山田浩貢,MONOist]

 一般的にコモディティ商品の販売は、他社よりも安く提供することでしか競争力を付けられないということが当たり前と思われています。コモディティ商品の代表である、家電業界ではシャープが経営難により買収されるなど、一昔前には考えられない事態に陥っています。

 今回は「コモディテイ=コストダウンが必須」は本当に正しいのか、家電業界に代表されるコモディティ商品を取扱う企業は今どういう経営をすべきかについて私の考え方を述べたいと思います。

「コモディティ=コストダウンが必須」は本当に正しいのか

 企業は事業が順調に推移するとすぐに売り上げを伸ばしたいという話になります。

 そのために次のどちらかを選択します。

  1. 新商品開発による魅力ある製品づくり
  2. 大量生産&販売によるコストダウン→安売り

 まず、1はとてもハードルの高いことです。大当たりする商品を開発するには膨大な時間とコストを要します。それだけではなく、いい商品を作ったつもりでも市場に受け入れられる保証はないのです。だからある意味ばくちに近いのです。

 またせっかくいい商品を作ったとしても、初期配荷の後のリピートに応えるために膨大な在庫を抱えようとします。その予想が外れたときのダメージはとてつもなく大きいのです。新商品開発による魅力ある製品づくりにはリードタイム短縮が不可欠です。

 2については「大量に物を作ると安くなる」というわれわれの心の中に染み付いた思い込みが一番怖いのです。ものをたくさん作ると製造費用が少しは安くなるかもしれません。しかし、高度成長期ならいざ知らず、現在のような需要が読めない時期にはこれは完全なばくちです。

 当たればいいが、当たらず長期不良在庫をたくさん抱えたという例を山ほど見ています。

 食品には賞味期限があります。またその4分の1の期間となる出荷期限があります。思ったより期限に限りがあります。流通のわがままにメーカーは振り回されています。

 家電などの電気製品では半年〜1年で旧モデルになります。その場合、大量に残った在庫は大幅な値引きで量販店や通販でたたき売ってもらうしかなくなります。

 また作ったものが全て売れる前提で利益が上がる計算をしていますが、売れ残りが大量に出たときのダメージは計り知れません。

 日本の家電メーカーの元気がなくなっているのはこれを繰り返したからではないでしょうか? 一部の会社は消えたり、買収されたりしています。

 なぜそんなに在庫をたくさん抱えるのでしょうか? それはリードタイムが長いからです。

 1の新商品開発の際に在庫を抱える理由は以下の通りになります。

  • 初期配荷の後のリピート注文が大量に来た時に(=読みが当たってヒットした時)、大量の製品在庫がないと出荷対応できないと思い込んでいるからです

 2の大量生産&販売によるコストダウンの場合に在庫を抱える理由は以下のようになります。

  • どこの会社でも営業部門は過大な需要予測をするからです。万に一つしか当たらないのに、その時に出荷できないと製造部門のせいで機会損失したとわめかれるのが、いやだからです。逆に過大な製品在庫が余っても問題になるケースは不思議なことにあまりないのです
  • まとめて作るのが唯一のコストダウンの手段だと、製造部門だけでなく、会社全体がそう信じて疑っていないからです

 需要予測した分が全部売れるという前提で計算をしてはいけないのです。

 ではどうしたらよいのでしょうか。

図1 図1 製造業における事業拡大の罠(クリックで拡大)
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.