「EMIEW3」に見えた、ヒトとロボットの共生(3/4 ページ)

» 2016年07月20日 07時00分 公開
[大内孝子MONOist]

リモートブレイン構成によるインテリジェンス機能

 ここでは音声認識を例に紹介するが、音声認識エンジンはEMIEW3のためだけに開発したというものではなく、日立の中で以前から研究開発されてきた技術だ。例えば「コールセンターの音声を分析する」といった需要から音声認識の研究開発は行われており、それをベースにしている。

 ただ、電話の音声を取得し認識するのとは異なり、ロボットの対話では話者とマイクとの距離が50cmから1mくらいはある。そうするとどうしても会話以外の音も集音してしまうので、14個のマイクを使って情報を集めて音声を抽出している。その抽出された音声を認識エンジンにかけることで、ようやくロボットが理解できる「情報」としての下準備が完了となる。

ヒトとの対話を重視するEMIEW3は頭部に14個のマイクを搭載している ヒトとの対話を重視するEMIEW3は頭部に14個のマイクを搭載している

 その後、中身に対する処理、例えば「東京駅への行き方を教えてください」という話しかけがあれば、その意図を理解し、回答を用意し、答えを音声合成でEMIEWの声に変換する。変換した音声ファイルをEMIEWに転送して、EMIEWから発話するという流れだ。

 データを送ってクラウド上で処理をし、本体に送るという流れで気になるのはやはり遅延だが、前述のような音声処理であっても、現状、応答時間を1〜2秒弱まで圧縮することができている。ロボットIT基盤の膨大なリソースを使うことで、この高速処理ができるようになっているという。

 本体側の処理とリモートブレイン側の処理は、このように、音声を認識したりするような、多少は遅延が許されるというような処理はリモートブレイン側で行い、一方、人とぶつからないように止まる、など反射的な判断はEMIEW3側で瞬時に行うという形で、あらかじめ設計できるところは切り分けがされている。

 将来的に、EMIEWが世の中に大量に存在するとなると、運用上のクラウドの負荷が心配になるところだが、EMIEWをコンピュータにつなぐことで処理の一部を負担するエッジコンピューティング的な手法などで、負荷を分散するやり方も検討しているという。

 今回の実証実験では、まずは数台から始める形になる。その上で、もうちょっと広げてみようということになれば台数を増やしたり、別の場所や店舗で展開する可能性も出てくる。1つの構成として1つの場所では1台だとしても、離れたところにEMIEWがいて会話をしていたりすると、データはクラウド上で処理するため集約して、一緒に賢くなることができる。そういったことも実証実験では取り組んでいくという。

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