小学生が若手技術者と製品開発――その狙いと可能性“伝える”授業でスマートグラス活用(1/2 ページ)

スマートグラスという最先端の情報機器を使って小学生が製品開発を体験。「誰に、どのように伝えれば関心や理解を得られるか」というコミュニケーションのあり方について学ぶと同時に、サポート側の若手社員にもコミュニケーションスキルの向上効果をもたらしている。

» 2016年08月09日 09時00分 公開
[西坂真人MONOist]

 小学生が地元企業の若手社員とともに、学校の授業で“製品開発”にチャレンジしている。この先進的なカリキュラムを学習に取り入れているのは、長野県諏訪市にある諏訪市立高島小学校。明治時代の創立で140年以上の歴史を誇る、日本でもっとも古い小学校のうちの1校だ。2016年7月7日の七夕の日に、この高島小学校でハッカソンが行われた。

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 このハッカソンに全面協力するのが、高島小学校から1.5kmほどの場所に本社を構える地元企業、セイコーエプソン。同社のスマートグラス「MOVERIO BT-200」を教材として提供し、同社の若手社員をサポート要員として派遣している。

photo スマートグラス「MOVERIO BT-200」を教材として提供

 この取り組みの仕掛け人は、MOVERIOの開発責任者で高島小学校の卒業生でもあるセイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部 HMD事業推進部 部長の津田敦也氏だ。

 両者の出会いはハッカソンからちょうど1年前の2015年7月8日。七夕の時期に課外授業として行われている星空観察会で、梅雨空に毎回悩まされているという話を聞いた津田氏が、星空アプリを搭載したBT-200を21台を貸与するとともに若手技術者4人を派遣。予想通り?! あいにくの雨にみまわれた星空観察会だったが、スマートグラスと星空アプリのおかげで子どもたちはHMD越しに満天の星空を見ることができた。

photo MOVERIOを使った星空観察会のようす

 この高島小学校では1977年から「白紙単元」というカリキュラムを取り入れている。“白紙”の名の通り、学習内容をあらかじめ定めず、教師と子どもたちが年度・学級ごとに学習内容を決め、それを子どもたちが責任を持って実施していくという自発性を促す学校独自のカリキュラムだ。

 スマートグラスによる星空アプリの体験を通して交流したことをきっかけに、6年生の白紙単元学習のテーマである「森を元気にしよう! プロジェクト」に、MOVERIOを取り入れた授業を実施。子どもたちたちが決めた「森を元気にしよう!」という活動にセイコーエプソンの社員も参加し、「スマートグラスを使ってどうすれば森を元気にできるか」を考えている。

 七夕のハッカソンでは、9つのグル―プに分かれた子どもたちが、セイコーエプソンの技術者たちと話し合って決めた各テーマに基づき、自ら収集した森についての写真や映像、パソコンで作成した資料などを、「魔法のメガネ」に見立てたMOVERIOに取り込む作業を行った。

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