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» 2016年09月28日 11時00分 UPDATE

3D設計推進者の眼(14):今も2D図面が必要である理由、そして中小企業を悩ます人と金の問題 (1/3)

機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は、3D CADが普及してきた今も2Dの図面が必須である事情について考えを巡らす。そこに常について回るのは、コストの問題だ。

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]

 3D CAD運用の推進活動における悩みの種の1つは、2D図面の存在です。何を悩むのかというと、2D図面のスキル、日本でいえば「JIS製図のスキル」の低下でしょう。「正しい図面を描ける」ことは、今もなお、また今後も設計者にとって重要なスキルだと考えています。

 また「設計者が3Dで設計をしているのに、加工部門に渡すために図面(2D)という表現への翻訳作業をなぜ行うのか」と、セミナーでもよく聞きます。私も3D推進を始めたばかりの頃、設計の合理化のために、そのような問題提起をよくさせていただいていました。

 もちろん、「2D図面レスで社内外の3Dデータを一貫ラインで構築できる」という私の理想は変わりません。しかし日本の全ての会社において、現状をすぐに変えることは不可能だろうと、日ごろ設計現場にいる身として痛感しています。

小規模な加工会社ではCAD/CAMが普及していない

 私は、前職も現職も、個別受注で生産する装置の設計開発・製造に携わる企業に勤めています。個別受注生産方式とは、機種別年間出荷台数をある程度予測はするものの、計画的に装置を生産するわけではなく、受注があるごとに装置を設計製造するものです。「五月雨式」とも言われます(※)。

筆者注 ※:「個別受注生産」とは製品の受注後に設計し、生産する形態で、部品在庫を持たないことが多くなります。「五月雨式」とは、断続的に装置が生産されること、すなわち計画的な数量の生産活動ではなく、都度の生産のことを表しています。

 また設計開発の着手から装置の組み立て完成までが2.5カ月〜半年といった短期間であることもあります。このような場合は、一度に同じ部品を大量製作するのではなく、一品一品製作することになるので、製作先も大規模な加工会社より、小規模な加工会社に依頼することがほとんどとなります。

 小規模な加工会社でも、先進的であればCAM(Computer Aided Manufacturing)を用いてマシニングセンター、複合旋盤などで加工しています。このような企業では、短納期であることや高い技術力を付加価値としていることもあって、加工費が相場よりやや高額だったという経験があります。もちろん依頼主側である設計者の図面作製費が削減できるメリットはあるのですが、コスト見積もりを管理する調達部門にとっては、単純に加工費が上がることは決してうれしいことではありません。

 実際、上述のような一部の会社をのぞき、小規模な加工会社の現場全般においてCAD/CAMの普及はしていないと私は考えています。CAD/CAMを導入するためには、まず工場の稼働率を上げるために交代制での勤務体制にして、CAD/CAMオペレータの育成をして、新たに工作機械も導入して……、といった“人・金”の問題がハードルとして立ちはだかるからです。

もっと、3D CADデータで部品加工を――CAD/CAM連携の推進

 それでは、加工依頼主すなわち発注元がそれらの投資に対して支援できるのでしょうか?

 ここで、3D CAD推進活動を始めたばかりの私が、CAD/CAM連携に注目していろいろと活動していた頃(2005年頃)の話をしましょう。

 当時の私はさまざまなセミナーに参加し、先進的な取り組みをする企業への訪問も実施していました。その中で、自社あるいは自分の考えとして、どのように3D CAD展開を行うべきかを考え、推進していました。3D CADと併せ3Dビュワーの利用も始まっていた頃です。

 切削加工を行う精密部品加工会社を訪問した際には、私は「3D CADを導入しているにもかかわらず、図面を作成・出図している状況について改善したい」という話をしました。「このような話は今後きっと増えていくだろうから、そのルールを構築していくことは、その会社側にもメリットがあるのは」と考えたからです。

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