連載
» 2016年09月29日 10時00分 UPDATE

オンリーワン技術×MONOist転職(4):“おもしろおかしく”仕事をして「ほんまもん」を作る――堀場製作所 (1/3)

日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第4回。今回は、グループ全体で世界27カ国48社を展開し、グローバルに分析・計測システムを提供している堀場製作所を紹介する。

[杉本恭子,MONOist]

 堀場製作所の前身である「堀場無線研究所」の創業は終戦直後の1945年10月。堀場雅夫氏が京都大学在学中に立ち上げた会社で、今で言うなら「学生ベンチャー」である。起業の目的は、大学で続けられなくなった「原子核物理」の研究をすることだったが、資金調達のために自作したpHメータを販売したところ、性能が良いと評判になり、「pHメータの堀場」と知られるようになった。現在は「測定装置の堀場」として知られ、主力のエンジン排ガス測定装置は、世界の約8割、国内では9割以上のシェアを占めている。

photo 堀場製作所(京都府京都市)

世界シェア8割の主力商品は、内緒で開発された!?

 堀場製作所は、現在、自動車計測システム機器、環境・プロセスシステム機器、医用システム機器、半導体システム機器、科学システム機器の5つの事業部門を展開している。これらの事業は、コアとなる技術を磨き、異なる事業分野に応用することで、効率的に展開してきたものだ。例えば、排ガスの分析に使用する赤外線計測は、煙突の煙の分析で使用する技術でもあり、血液中の白血球量を調べる粒子計測は、排ガス中や大気中の汚染物質の量を調べる技術でもある。応用範囲の広い確固たるコア技術と、サンプリングや測定のノウハウを持っていることは、同社の強さでもある。

photo 5つの事業セグメント

 エンジン排ガス測定装置「MEXA(Motor Exhaust Gas Analyzer)」も、医学用の呼吸の分析器がベースになっている。そもそも医学用に作ったものを、そのころはとても汚かった排ガスの測定に転用することについては、当時の堀場雅夫社長は猛反対したそうだ。それでもその後の需要に確信を持っていた技術者は、いわば「内緒」で開発、製品化した。非常に感度、精度が高く、1975年に米国の環境保護庁で標準採用され、逆輸入の形で日本のメーカーも採用するようになり、結果的にグローバルな大ヒット商品となった。ちなみに、こっそりと開発を続けていたこの技術者は、2代目社長の大浦政弘氏である。

photo エンジン排ガス測定装置「MEXA(Motor Exhaust Gas Analyzer)」

 1966年にエンジン排ガス測定装置の1号機が完成して以降、これまでに出荷した台数は約8000台。近年は排ガス規制がさらに厳しくなる動きがあり、またより低燃費なエンジンの開発にも活用されるなど、MEXAシリーズの需要は高まっている。顧客ごとに仕様が異なる製品であるにもかかわらず、最新のMEXA-ONEも年間約400台のペースで出荷。世界シェア8割のMEXAは、世界中の自動車メーカーにとって、なくてはならないものになっているのだ。

photo

 また、ヨーロッパで2017年9月から開始されるといわれている、乗用車のRDE(Real Driving Emissions:実路排ガス試験)規制も見据え、路上走行中の自動車の排ガスを測定できる車載型排ガス計測システム「OBS-ONEシリーズ」も開発した。MEXAは、家庭で使う冷蔵庫ほどの大きさで、実験室で使用する装置だが、OBS-ONEはちょっと大きめの工具箱ほどのサイズ。操作性や搭載性などに優れ、「第46回機械工業デザイン賞」で最優秀賞「経済産業大臣賞」を受賞している。

世界唯一のトータルソリューション企業へ

 現在、自動車部門の売り上げが約4割、そのうち排ガス測定装置の売り上げが6〜7割を占めている堀場製作所は、現社長である堀場厚氏が社長に就任した1992年以降、海外企業とのM&Aにより、特に自動車、医用、科学分野を強化してきた歴史がある。

 2005年にドイツのカール・シェンク社(以下、シェンク社)から買収した事業もその一つ。1881年設立の伝統ある企業で、エンジンテスト、ドライブトレインテスト、ブレーキテスト、風洞実験、排ガステストに関する試験設備の事業であった。その事業を買収したことにより、排ガス計測装置から、パワートレイン開発までほぼ全ての計測設備を提供できるようになり、自動車開発におけるトータルソリューション企業へと一気に事業を拡大。自動車メーカーの要望もあり、装置や設備の製造、販売だけでなく、実験室全体の設計も手掛けるようになった。排ガス計測が不要な、電気自動車の開発でも使われる設備を持つ意味も大きい。

 2015年7月には、車両開発エンジニアリングや試験設備を提供するイギリスのMIRA Ltd.(以下、MIRA社)を買収した。MIRA社が保有していた、東京ドーム60個分の敷地にある全長4.5kmのテストコースや、衝突試験設備などを手に入れたことで、堀場製作所は自動運転、安全性能といった分野にまで、ビジネス領域を広げている。

photo MIRA社全景
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.