パナソニックとシーメンスの統合ラインシステムが始動、3年で100億円目指すスマートファクトリー(1/2 ページ)

パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は実装ラインを統合管理する「統合ライン管理システム」を開発し、販売を開始した。同システムは2016年4月に発表したドイツのシーメンスとの協業によるもの。

» 2016年10月31日 13時00分 公開
[長町基MONOist]

 パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は2016年10月26日、同社のスマートファクトリーソリューション(SFS)事業部の事業戦略を発表。新たにドイツのシーメンスとの協業により開発した実装ライン全体の生産性を向上させるシステム「統合ライン管理システム iLNB」の受注を開始したことを発表した。

photo パナソニック 役員 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 副社長の青田広幸氏

 パナソニックは2016年4月にシーメンスと製造のデジタル化について連携していくことを発表※)。ライン統合コンセプトの標準化に向けた取り組みを共同推進する他、世界中に分散する製造拠点にも共通するオートメーションの規格の開発において協力することを明らかにしていた。パナソニック 役員でオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 副社長の青田広幸氏は「自動車や産業機械、通信機器関連の電子機器メーカーなどをターゲットに今後3年間で100億円の売り上げを目指す」と述べている。

※)関連記事:パナソニックとシーメンスがライン統合コンセプトの標準化で提携

マスカスタマイゼーションを実現するスマート工場

 モノづくり現場では、顧客ニーズの多様化により、さまざまな製品を同一生産ラインで製造したいという要望が高まっており、製造工程は複雑化している。これらのニーズを満たすためにはマスカスタマイゼーション(大量生産の効率でカスタム製品を作る仕組みのこと)に対応するスマートファクトリー化が必要になる。

 スマートファクトリーを実現するキーテクノロジーは、IoT(モノのインターネット)により設備同士を連携、協調させ、生産工程の全プロセスで、設備からリアルタイムにデータ収集、制御することである。一方、実装ラインには複数のメーカー設備が混在し、ライン全体を制御するためにはメーカーごとの複数のコントロールシステムが必要となっており、スマートファクトリー化の障壁となっていた。

 今回発表した「統合ライン管理システム iLNB」は、パナソニックが保有する実装ライン制御ソフトおよびプロセスノウハウと、シーメンスが保有する「SIMATIC 産業用PC」の強みを融合し、実装ライン全体を他社設備を含めて、一括で管理制御できるラインコントローラーシステムである。

photo 「統合ライン管理システム iLNB」の使用イメージ図 出典:パナソニック

 これにより1台のPCで実装ライン全体の稼働状況をリアルタイムで収集し、さらに一括で制御できるようになる。同システムを導入することで約3割の生産性向上が図れる見込みだという。実際に「他社設備を含めた自動機種切り替え作業により、手動で行っていたのに比べて、切り替え時間が3分の1に削減でき、生産効率が向上する事例も生まれている」(パナソニック)という。さらに、今まで人に頼っていた機種切り替えのスキルが不要となる他、プログラムの選択も自動で行うため、誤生産をするというようなこともなくなるとしている。

photo 「統合ライン管理システム iLNB」の活用事例と生産性向上(クリックで拡大)出典:パナソニック

 統合ライン管理システムのもたらす価値について、青田氏は「これまで、さまざまな装置により製造プロセスの自動化は進んできた。だが、多くの情報(サイバー)と製造プロセス(フィジカル)部分が融合できていないという課題が残されている。今回開発したシステムは、パナソニックの持つプロセスノウハウと生産実行システム、シーメンスの進めているオートメーション分野などでのデジタルエンタープライズというコンセプトを併せることで大きな価値を作ることができた。工場フロア全体をリアルタイムに監視し、メーカーを問わず、設備をネットワークでつなぐというソリューションを提案していく」と販売に向けて意欲を示した。

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