3Dプリンタ機能を加えた“足し引き自在”の金属加工機投入が本格化JIMTOF2016 開催直前情報(1/2 ページ)

2016年11月17〜22日に東京ビッグサイトで開催される「JIMTOF2016」で注目される技術の1つが、積層と切削の両方の加工が行える複合型の金属加工機である。

» 2016年11月14日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 2016年11月17〜22日に開催される「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」において、見どころの1つだと見られているのが切削加工機と金属3Dプリンタの機能を併せ持つ複合型金属加工機である。

 従来工作機械といえば、旋盤やマシニングセンタ、放電加工機など、基本的には素材を「削る(引く)」ことで形状を作り出す機器が主役となっていた。一方「(積み重ねて)足す」技術である3Dプリンタは、材料面での制約や造形後の仕上げ加工の必要性などもあり、既存の技術では製造できない部品の試作や小物部品の生産に限られてきた。

 しかし、前回のJIMTOF2014ではDMG森精機とヤマザキマザックが切削加工のオプション機能として積層造形を取り入れた新機種を発表。今回新たにオークマも製品を発表したことにより、市場形成が本格的に進みそうな気配を見せ始めている。

「足し引き自在」の意味

 そもそもこれらの積層機能を加えた切削金属加工機が注目を集めているの理由として、それぞれの弱点を補完できるという点がある。切削加工機は、金属の素材から対象物の形を削り出していくことになるため、形状によっては多くの材料が切りくずとして無駄に捨てられることになる。これは材料などによっては大きなコストとなりえる。

 一方で、金属3Dプリンタは、金属粉末などを溶かして積んでいき形状を作るが、層状にして積み上げていくため、表面などが層模様となりそのままでは利用できない。また、基本的には下から順番に造形していくため、形状によってはサポート材などが必要で、こうしたサポート材の切り離しなどの処理も必要となる。つまり、積層造形後に切削を含めた後処理が必要になるというわけである。

 こうした両方のニーズを満たすのが、切削加工機と金属3Dプリンタの機能を併せ持つ複合型金属加工機である。積層と切削を組み合わせることで、最終的な形状に近い形で材料を積層することで材料の無駄を抑えることが可能になる。また、これに切削をかけることで、金属3Dプリンタ単体時に必要だった工程間の無駄な移動などを抑え、1台で実現することが可能となるというわけである。また、1台に工程を集約できることで省スペース化も実現でき、工場スペースの有効活用ができるようになる。

新たに投入を発表したオークマ

 新たに同市場に参入を発表し、従来発表されている製品よりも工程カバー範囲が広い製品を投入を表明しているのがオークマである。同社では新たに、スマートマシン「LASER EX」シリーズの開発を発表。ミーリング、旋削、研削加工に、焼入れ、金属積層造形を加えた究極の工程集約を世界で初めて1マシンで実現していることが特徴だ。

 従来投入された機器に比べ、レーザー精密焼き入れ機構を組み込み、従来以上の工程集約を実現している。さらに航空機基幹部品の品質要求に応えうる世界最高水準の高信頼性、安定性を実現しているという。

photophoto 複合加工機「MU-6300V LASER EX」(左)と複合加工機「MULTUS U3000 LASER EX」(右)
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