思考の“切り口”を見つける裏ワザはこれだ!“イノベーション思考”で発想が変わる!(4)(2/2 ページ)

» 2016年12月15日 09時00分 公開
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3つの切り口 その2:工程や経過時間で考える

 私は開発環境のコンサルティングを今担当しているので、工程で考える、というプロセスを必ず実施します。工程は時間の順序とも言いかえることができます。時間軸で考えるので、タイムスリップなどしない限り、ダブリもなくなるはずなのです。

 例えば、ある飲食店で「ランチタイムの回転率を上げるには?」というテーマでは、「迅速な受注」「速やかな調理」「素早い会計」と、お店に入ってから食べて出るまでの時間軸で考えることができます。

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3つの切り口 その3:対照概念

 「ある機器の性能を上げるには?」という問いがあったとしましょう。エレクトロニクスエンジニアの私はパッと「ソフトウェア」「ファームウェア」「ハードウェア」がパッと思い浮かびます。一般的に同じレイヤに存在する、対照関係にあるものたちを並べる、という方法です。

 例えば第2回目で出てきた、「旅行」であれば、「法人」と「個人」、「国内」と「海外」というように分けることができます。これには個人の知識がかなりものを言います。そのテーマに関する対照概念にはどのようなものがあるのか、ボキャブラリーや知識が豊富であればあるほど、切り口を見つけるのは楽になると思います。先ほど例に出した「ソフト」「ファーム」「ハード」という切り口も、エンジニアだからこそパッと出てきますが、モノづくりに全く関係性のない方はピンとこないかもしれません。そういった意味でも、ただ自身の関連分野だけを知るのではなく、広い視野で知識を身につけておく、ということはイノベーションを起こす上でかなり重要です。

慣れるための訓練に

 何度も言いますが、これらのテクニックは、“なかなか最初の1個が出てこないとき”に使ってみてください。何でもこれらに当てはめるのではありません。一度当てはめても、「本当にこうなのか?」と自分自身に問い、「思考する」ことを忘れないでください。

 「ランチタイムの回転率を上げるには?」の問いに、「迅速な受注」「素早い調理」「素早い会計」と挙げました。しかし、「本当にそうなのか?」と考えたら、「長居したくなる空間っていうのもあるよな……」なんていう気付きも生まれるかもしれません。すると構成がまた変わってきます。「提供時間」「メニューの性格」「居やすさ」、こんな切り口だってアリなんです。正解がないからこそ、フレームワークや3つの切り口ばかりに頼らず、考え抜いてみてください。

 これらを活用するのは、MECEであることが多いからです。ただ、前回お伝えしたとおり、実戦ではMECEの完璧な出来栄えを求めるわけではありません。大事なのは発想をどんどん生み出していくことであって、MECEを徹底することではないのです。より有効な切り口をみつけるトレーニングなんだ! と認識し、活用していってください。

MECEであるかどうかに、正解はない

 MECEであるかどうかには、正解はありません。だからこそ、フレームワークでなく、自分の発想で導き出した答えに価値があるのです。正解がないからこそ、新たなイノベーションが起きるのです。モレがあるかもしれない……と恐れるのではなく、「正解かどうか分からないけど、これが自分の考えなんだ!」と勇気を持って決断してみてください。「MECEという約束のもと、しっかりと考えた。だから大丈夫。ただ思いつきで並べたんじゃない。そうやって背中を押してくれるものなんだ」と捉えてください。正解のない世界の中で、自分の導き出した答えに信念を持たせてくれる、それがMECEです。絶対的な正解はないけれど、自身のよりどころとなるもの。だからあなどってはいけないのです。

今ある貯蓄を1年間で100万円増やすには?

 さて、これまで「イノベーション思考」を実践するためのさまざまな手法をお伝えしてきました。そこでぜひ皆さんに演習問題にチャレンジいただきたいと思います。次回の更新にて模範解答を解説いたします。

テーマ:「今ある貯蓄を、1年間で100万円増やすには?」

 しっかりとロジックツリーを書き、自身の思考を可視化してください。必ず“考え方のクセ”に出会うはずです。それではまた次回!

筆者プロフィル

株式会社VSN VIエキスパート 桑山 和彦(くわやま かずひこ)

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通信機器、情報機器メーカーより株式会社VSNに転職。VSNに入社後はエレクトロニクスエンジニアとして半導体のデジタル回路設計やカメラ用SDK開発業務に携わる。

2013年より“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」を推進するメンバー「バリューチェーン・イノベーター・プロフェッショナル」に抜擢。ビジネス・ブレークスルー大学・大学院の教授である斎藤顕一氏より問題解決手法の教示を受け、いくつもの問題解決事案に携わる。

現在はVIエキスパートとして、よりハイレベルなコンサルティングサービスを提供する他、社員の育成プログラムの構築〜実施を行う。

株式会社VSN http://www.vsn.co.jp/

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