特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

インダストリー4.0の推奨規格「OPC UA」、パブサブモデルでスマート工場に対応産業用ネットワーク(1/2 ページ)

日本OPC協議会は、OPCの動向を国内で紹介する「OPC Day 2016 in Japan」を2016年12月に開催。2017年にリリース予定の「OPC UA」のPublish/Subscribe通信モデルの概要やスマート工場内での意味、今後のロードマップなどについて紹介した。

» 2017年01月12日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 OPCの国内での普及を進める日本OPC協議会は2016年12月に都内でカンファレンス「OPC Day 2016 in Japan」を開催し、OPCに関する最新動向などを紹介した。OPC規格の1つである「OPC UA(OPC Unified Architecture)」はドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の推奨規格とされている。

 同カンファレンスでは「OPC UA」関連技術や事例など、実際のオペレーションへの組み込み方など多岐にわたる話題が取り上げられたが、今回は「OPC UA」のPublish/Subscribe通信モデル(以下、パブサブモデル)の概要と意義について説明した、日本OPC協議会 技術部会 副部会長の藤井稔久氏(アズビル)の講演内容について紹介したい。

実際のユースケースで出た課題を解決

 「OPC(OPC Classic)」はもともとWindowsベースで複数のアプリケーションを連携させることを目指した通信規格である。これを、より広範なシステムに対応できるようにしたのが「OPC UA」だ。IoT(モノのインターネット)活用が広がり、IT(情報技術)とOT(制御技術)間の連携を実現する必要が出てくる中で注目度を高めている技術である。ドイツのインダストリー4.0では、基本的に既存の標準技術を活用できるところは活用するという方針を示しているが、OPC UAは柔軟性などが評価を受け早期から推奨規格とされてきた。

 ただ、OPC UAは上位システムとの連携については有効だが、生産現場の制御のようなリアルタイム制御が要求されるところでは、利用が難しかった。障壁となっていたのが、クライアントサーバ方式だった通信の仕組みと、通信による遅延の問題である。今回新たに機能拡張が予定されているパブサブモデルは、1対1の通信が要求されるクライアントサーバ方式の課題を解決しようというものである。

photo 日本OPC協議会 技術部会 副部会長の藤井稔久氏

 藤井氏は「OPC UAはインダストリー4.0の推奨規格に採用されたことから大きな注目を集めたが、実際にユースケースを想定した実証を進めていくと課題が多いということも明らかになってきた。特に不特定多数の機器に情報を提供する場合では現行の仕組みでは通信にリソースがかかりすぎて多くの現場で採用するのは難しいことが明らかだった。これを解決する仕組みとしてパブサブモデルを加えることになった」と述べている。

 現行のクライアントサーバ方式は、基本的にはクライアントとサーバが1対1の関係を構築しなければならない。サーバ内にサブスクリプションを生成しクライアントごとに処理していくことになる。そのため一斉にクライアント側の情報を書き換えるという場合や逆にクライアント側からいくつかサーバに情報を発信するというような場合は非常に負担が大きかった。パブサブモデルは、1対多の通信が自由に行えることが特徴である。マルチキャストの方式でクライアント側に一斉に情報配信を行うことなどが可能となる。

photo クライアントサーバ方式とパブサブモデルの比較(クリックで拡大)出典:日本OPC協議会

 セキュリティを確保する手法についても、クライアントサーバ方式とは変わってくるが、UADP(UA Datagram Protocol)によるセキュアなIPマルチキャスト方式を採用するなど、安全性を確保する取り組みが進められている。

photo セキュリティ面でパブサブモデルで採用されたOAuth2の考え方(クリックで拡大)出典:日本OPC協議会
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