日本の製造業は大丈夫だ! 悔いや反省をバネに前を向く学生たち車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2016(3)(1/6 ページ)

晩夏の熱い戦い、全日本学生フォーミュラ大会(以下、学生フォーミュラ)から早くも4カ月。最後のピットレポートが年をまたいでしまいました。大変お待たせいたしましたが、お約束の通り4チームの様子を紹介させていただきます。

» 2017年01月16日 06時00分 公開

 晩夏の熱い戦い、全日本学生フォーミュラ大会(以下、学生フォーミュラ)から早くも4カ月。最後のピットレポートが年をまたいでしまいました。大変お待たせいたしましたが、お約束の通り4チームの様子を紹介させていただきます。

#E5 一関工業高等専門学校・岩手大学・岩手市立大学(SIFT=岩手連合フォーミュラチーム)

 正式種目に昇格して4年目となるEV(電気車両)クラスへの出場校のピットにお邪魔しました。岩手県の3校で構成する合同チーム(SIFTは Student of Iwate Formula Teamの略)のチームリーダーである、一関工業高等専門学校の菊池俊行さんにお話を聞きます。

鮮やかなブルーのカウルが印象的なマシンとチームリーダーの菊池俊行さん 鮮やかなブルーのカウルが印象的なマシンとチームリーダーの菊池俊行さん(クリックして拡大)

 3つの学校の合同チームなのですね?

菊池さん はい、もともとは3校それぞれに学生フォーミュラに参加しようとしていたのですが、岩手産業振興センターからの働きかけで、「次世代モビリティ研究を通じての人材育成」を目的として合同でEVマシンを作ることになりました。

 行政が積極的に支援してくれているということですね?

菊池さん はい、岩手県はもちろんのこと、一関市も市の管理する駐車場を走行テストに使わせてくれるなどバックアップしてくださっています。

 EVクラスはなかなか参加校が増えてこない中、行政の後押しはうれしいよね。(マシン後ろ側に回って)やっぱりICV(内燃機関車両)と比較するとシンプルだなぁ……モーターは1つですか?

菊池さん いいえ、2つです。ドライブシャフトの奥、左右にあります。2つのモーターのトルクを遊星歯車を使って左右の駆動輪に適切にトルク配分します。このトルクベクタリングシステムがうちのチームの特徴です。「2モーター トルク差増幅型TVD(Torque Vectoring Differential)」と名付けています。

 それをコーナリングなどで活用するわけですね。

菊池さん はい。例えば、コーナーでアウト側のホイールにプラス側の大きなトルクをかけ、イン側にはマイナス側のトルクをかけてコーナリングの安定性を向上させます。

MONOist 齊藤 トルクベクタリングは最近市販車でも装着され始めましたよね。

 マツダや日産自動車がCMしていますよね。私はEVには大きな可能性を感じていて、例えば4つのホイールにインホイールモーターを組み込んでしまえば何でもできちゃうなぁって。

菊池さん トルクベクタリングの方法にはこのTVDの他に、独立のモーターを使う方法と駆動用のモーターと差動用のモーターを使う方法があります。前者はモーターの個体差により、特に高回転域でモータートルクが小さくなった時の挙動に問題が出てきます。後者は駆動用モーターが強力になるとともに差動用のモーターも強化しなければならないので、重量やコストの面で不利になります。その点TVDは駆動用モーターだけでいいですし、モーターの個体差も問題になりません。

 素晴らしい! このアイデアは皆さんで考えたの?

菊池さん わがチームのファカルティアドバイザーである先生の研究室で進めています。

一番手前に見えるのがTVDシステム、モーターはドライブシャフトの奥 一番手前に見えるのがTVDシステム、モーターはドライブシャフトの奥(クリックして拡大)
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